日本臨床細胞学会雑誌
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腹膜偽粘液腫の1例
新谷 一郎松本 容子
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1983 年 22 巻 4 号 p. 832-837

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抄録

45歳で子宮筋腫と右卵巣のう腫で子宮腟上部切断術および右附属器別出術をうけた既往のある52歳の婦人が, 8ヵ月前よりるい痩と腹部膨隆をきたし来院, 内診所見で左側の卵巣が鵞卵大のう腫状でかつ小骨盤腔左下壁に一部癒着し, また大量の腹水貯留を認めそのダグラス窩穿刺によって帯黄透明のゼリー状粘液を得て卵巣粘液のう腫に続発した腹膜偽粘液腫と診断した.
この穿刺液はPAS染色, アルシアン青染色で強陽性を示し, なかにわずかな組織球, 線維細胞と腹膜上皮由来の中皮細胞を認めたが粘液産生細胞はみられなかった.開腹手術にて全腹膜面および腹腔内全臓器の漿膜面にゼリー塊状の腫瘤を認め, その捺印細胞診ではシート状の円形細胞や粘液産生の認める小型印環細胞, および塊状の粘液産生のある大型細胞集団を認めた.そのうち大型細胞集団は中心部は軽度重積しており, 核小体は不明で核は軽度に大小不同があり, 一部にはMitosisを示すものもあるが細胞形態学的には悪性所見に乏しかった.
一方, CTでは原発卵巣のう腫は明瞭であり, 肝や脾と腹水との境界は直線的でなく凹凸を示し, また肝や脾に腫瘍像がないため貯留液が漿液性腹水でないことを示し, 粘液貯留の診断の一助となるように思われた.

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