日本臨床細胞学会雑誌
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眼腫瘍における穿刺吸引細胞診の臨床的, 病理組織学的意義について
麻薙 薫堀内 文男中村 泰久
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1984 年 23 巻 1 号 p. 9-15

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抄録
眼科領域における穿刺吸引細胞診の報告はわずかである.細胞診による眼瞼, 眼窩腫瘍の悪性度, 病理組織像の推定のため本研究を行った.
142例の眼瞼, 眼窩腫瘍患者のうち, 視診または触診で確認しえた腫瘍には, 直接または経皮的に穿刺吸引細胞診を行った.球後腫瘍には, 安全のため手術時施行した.22G前後の注射針を5~10ccの注射筒につけ腫瘍を穿刺し細胞を吸引し, Papanicolaou染色およびGiemsa染色を行い鏡検した。また各症例につき細胞診断と組織診断とを対比検討した.
病理組織診断は93例になされた.組織学的に悪性腫瘍と診断された46例の細胞診において, 疑陽性以上の異型細胞は93.5%に認められ, 組織像の推定は84.8%に可能であった.組織学的に良性と診断された47例では, 誤陽性はなく, 細胞診陰性で, 良性腫瘍と正診できたものが87.2%であった.
本法は, 手技が簡便であり, 患者に対する危険性, 患者の苦痛が非常に少なく, 腫瘍の良性, 悪性の診断のみならず, 組織像をも推定可能であり, 治療方針決定など, 臨床的に有効な検査法であると考える.
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