日本臨床細胞学会雑誌
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肺癌症例の喀痰細胞診における乳酸脱水素酵素 (LDH) の研究
第2報
藤岡 浩本間 敏明内田 義之斎藤 武文長谷川 鎮雄大塚 俊通
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1984 年 23 巻 1 号 p. 16-23

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抄録
乳酸脱水素酵素 (以下LDH) を, 酵素組織化学的方法を用いて測定し, 肺癌の細胞診に応用した.LDHを, 正常細胞と腫瘍細胞の判別の指標として利用できる可能性について, 剥離細胞の気道内での変化も考え, 喀痰標本と擦過標本の比較を中心に観察し, 合わせてLDHアイソザイム, 血清LDHの測定を行った.染色は, 乳酸を基質としてニトロブルーテトラゾリウムを還元し, 不溶性の色素ジホルマザンとして沈着させ, 観察するとともに尿素阻害試験を加え, 失活の程度を比較観察した.LDH染色上正常細胞については, 喀痰細胞, 気管支擦過細胞に差がみられたが, 染色性はほぼ同様であり, 尿素阻害試験上抵抗性を示した.腫瘍細胞は, 気管支擦過細胞が喀痰細胞より染色性が強く, 尿素阻害試験上抵抗性を示さなかった.嫌気性代謝のためLDH-M分画が優位であり, 気道内の変化によって影響を受けることは, 比較的少ないと考えられ, 細胞内LDHを喀痰細胞診に応用できる可能性を示唆した.
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