日本臨床細胞学会雑誌
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腟・頸部細胞診による子宮体癌の診断
特に採取部位と病理学的所見との関連について
金子 義晴柳原 敏宏荻野 満春根本 昌夫
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1984 年 23 巻 2 号 p. 127-131

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抄録

子宮体癌21例にっいて, 術前の後膣円蓋擦過スメア, 子宮膣部擦過スメア, 子宮頸管擦過スメアと摘出標本における病理学的所見との関連性を検討し, 次の結果を得た.
1) 3種のスメアを組み合わせても, 異型細胞出現率は67%であり, 内膜スメアの88%の診断率に及ばなかった.
2) 組織学的分化度が低くなるほど, 異型細胞出現率が上昇したが, 特に頸管スメァによる診断率が良好であった.
3) 子宮筋層浸潤のない症例での異型細胞出現率は60%, 筋層浸潤のある症例でも73%であり, 筋層浸潤を有する症例でfalse negativeが27%もあった.
4) 腫瘍が子宮腔の1/2以上を占める症例では, 頸管スメァ単独で70%の異型細胞出現率であったが, 1/2以下の症例では, 3種のスメアを組み合わせても55%であった.
5) 閉経後の症例では, 異型細胞出現率が82%であったのに対し, 閉経前の症例では, わずか50%であった.
以上の結果より, 頸管スメア, 次いで後膣円蓋スメアの体癌検出率が高いこと, 高分化型の診断が困難であることが判明した.

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