1985 年 24 巻 2 号 p. 137-143
糖尿病, 肝線維症, 動脈硬化などに治療効果が認められているエラスターゼの作用を, 細胞レベルで調べた.
糖尿病の実験系としては, ラット膵ラ氏島細胞を培養し, その培地中へのインスリン産生量を指標として, エラスターゼ添加の影響をみた.結果は, エラスターゼを添加することによってラット膵ラ氏島のインスリン産生量が著明に促進され, 培地内の糖濃度を高めてもその促進現象は持続した.
高度にコラーゲン線維を形成するラット肝由来株を, エラスターゼ添加培地で9ヵ月以上培養したところ, その線維形成が強く阻害された.
培地にツィーン80を添加することにより, 脂肪変性の状態にした細胞を, エラスターゼで短期間処理したところ, 脂肪変性細胞が選択的に剥離した.