日本臨床細胞学会雑誌
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髄膜転移をきたした胃癌の髄液細胞診の3例
岩 信造増田 一吉由谷 親夫今北 正美植田 初江徳田 良三小林 忠男
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1985 年 24 巻 2 号 p. 178-182

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抄録

髄液細胞診で悪性細胞の存在を胃原発の3症例につき証明することができた.その細胞診所見と病理組織学的所見を比較検討した.
症例1の髄液細胞像は孤立散在性で, 結合性も弱く, 重積性はない.細胞質は青緑色一部空胞形成がみられ, N/C比は大である.細胞径は10~20μ, 核径は12~13μで.比較的小型である.核小体は大きく丸い.症例1については病理解剖を実施し, 胃原発巣を大彎側幽門側に認め, 8×7×2cm大のBorrmann III型の腫瘍であった.組織学的には印環型腺癌であった.電子顕微鏡像は腫瘍細胞間の接合斑はみられず, 腺管形成がみられた内腔に粘液はなく, また, 微絨毛も明瞭でなかった.症例2の髄液細胞診は症例1とほぼ同様の所見を呈した.手術時に大彎側幽門側に直径5cmのBorrmann III型の腫瘍を認めた.組織学的には中等度分化型腺癌の浸潤部位と極めて分化度の低い腫瘍細胞の2つの細胞像が観察された.症例3では, 胃角部, 食道下端にBorrmann IV型の腫瘤の存在を認めた.病理組織診断は印環型腺癌であった.髄液細胞診は症例1および2と同様の細胞像を呈した.症例2および3についてはPAS染色を実施し, 原発巣推定に有用であった.

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