抄録
著者らが樹立した悪性黒色腫培養細胞 (GAK) およびnude mouse移植腫瘍細胞を用いて, 電顕的観察を行うとともに, premelanin反応, dopa反応, dopa-premelanin二重反応を電顕レベルで行い, melanogenesisを中心として検討し, 以下の結果を得た.
1. Melanogenesisの種々の段階のmelanosome (MS) が多数観察され, 本腫瘍細胞の旺盛なmelanin生成能が確認された.また悪性黒色腫の神経原性を示唆するといわれている軸索体様構造物も観察された.さらにpremelanin反応を行い, MSばかりでなく, melanogenesisのより初期の生成物であるpre-MSも増強した電子密度を呈することから明確に観察し得た.またdopa反応にてmelanin生成酵素であるtyrosinase活性をpre-MSおよびcoated vesicleにみいだし, 従来, 生化学的検索や立体構造的解析にておもに証明されていたGERL様構造物にもtyrosinase活性をみいだした.
2. 本腫瘍細胞は悪性黒色腫の神経櫛由来を反映して上皮性とも非上皮性ともいえない電顕所見を呈した.
3. 悪性黒色腫の細胞診断学上の特徴所見の1つである核内空胞は電顕的に細胞質の核内陥凹として観察された.この成因は核が著しい凹凸不整形を呈し, 深い陥凹を有するために生ずるものと考えられた.