抄録
52歳の男性に発生した有茎性肝外発育型肝細胞癌の1例を報告した.腫瘍は, 肝右葉下面と索状の結合織で連絡し, 23×15×10cm大で, 被膜を有し, 中心部は壊死性変化が高度であった.本来の肝には肝硬変症が認められたが, 腫瘍は存在しなかった. 術前の細胞診では, 腫瘍細胞は巨大で著明な大小不同性, 多形性がみられ, 特に紡錘形のものが多数認められたため, 平滑筋肉腫を強く疑った.しかし, 切除された腫瘍では組織学的に胞巣構造がうかがわれ, 腫瘍のごく一部に索状配列の明らかな肝細胞癌像が認められた. さらに, 電子顕微鏡的に細胞間隙に細胆管様構造が存在したことから, 本腫瘍は肉腫様配列を示す未分化肝細胞癌と診断された. 患者は術後3年になるが, 再発の徴候はなく, 健在である.