日本臨床細胞学会雑誌
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多数の砂粒体様石灰を認めた腺腫様甲状腺腫の1例
松田 実山登 直美
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1986 年 25 巻 4 号 p. 770-773

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抄録

甲状腺腫瘤穿刺材料に, 上皮細胞とともに, ヘマトキシリンに濃染し, 層状構造を示す砂粒体様石灰を多数認めたため, 細胞診陽性と判定したが, 手術の結果, 腺腫様甲状腺腫であった1例を報告する.
摘出された腫瘤は大小種々の濾胞よりなり, 間質内に多くの石灰化巣が認められたが, 砂粒体はみいだし得なかった.油浸にて, 細胞診標本にみられた砂粒体様石灰を再度観察すると, 同心円状かつ層状の構造を示すが, 中心部は淡く, 顆粒状ないし泡沫状で, 癌例にみられる真の砂粒体のようにびまん性に染色されていなかった.PAS染色も陰性であり, 本症例にみられた砂粒体様石灰は, 変性や壊死によって生じた石灰沈着がたまたまこのような形を呈したものと考えられた.

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