日本臨床細胞学会雑誌
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卵巣漿液性嚢胞腺癌の腹水細胞診におけるCA125およびEMAの免疫細胞化学的検討
重政 和志谷岡 慶英松田 博永井 宣隆江川 健士勝部 泰裕上馬場 是美藤原 篤
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1988 年 27 巻 4 号 p. 459-467

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抄録

卵巣漿液性嚢胞腺癌10例を対象として, 酵素抗体法を用いたCA125およびEMAの免疫染色を行い, それらの組織局在および腹水中癌細胞, 中皮細胞, 組織球における染色性を検討した. また対照として非癌症例の腹水中中皮細胞におけるCA125およびEMAの染色性もあわせ検討し, 以下の結果を得た.
(1) 摘出組織において, CA125およびEMAはそれぞれ90%(9/10), 100%(10/10) とともに高率に陽性所見が認められた.
(2) 腹水中癌細胞においては, CA125およびEMAはともに10例全例 (100%) で陽性所見が観察され, またCA125-EMA二重染色によりCA125はEMAと比較し高率に癌細胞を検出し得る可能性が示唆された.
(3) 癌症例および非癌症例における腹水中中皮細胞でのCA125の陽性率はともに高率であり, 一部の活動性中皮細胞においては癌細胞類似の染色性が観察された. 一方, EMAはごく一部の中皮細胞と反応するのみであり, また活動性中皮細胞における染色性も癌細胞と比較すると明らかに微弱であった.
(4) 腹水中組織球においては, CA125, EMAともに陽性所見を認めなかった.
以上の結果, CA125, EMAの両者を組みあわせて腹水細胞診に応用することにより, 原発巣の推定や良・悪性の鑑別の補助として利用し得ることが期待された.

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