日本臨床細胞学会雑誌
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27 巻, 4 号
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  • 大野 英治, 蔵本 博行
    1988 年 27 巻 4 号 p. 449-458
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    子宮体癌の組織分化度別診断基準を確立するため, GI16例, G235例, G37例の各腺癌症例および異型内膜増殖症 (AEH) 13例, 計71例の内膜細胞診標本をretrospectiveに検索した. なお細胞採取はエンドサイト法によった. さらに, 体癌細胞のアルカリホスファターゼ (ALP) 活性を細胞化学的に検討した. G1腺癌とAEHとの鑑別点として,(1) 辺縁不整樹枝状集塊,(2) clusterにおける最外層核の突出,(3) 核形不整,(4) 核縁肥厚,(5) クロマチンの不均等分布,(6) 核小体数,(7) tumordiathesisの7項目が有用で, G1腺癌ではその傾向が顕著であった. G1, G2, G3各腺癌の鑑別点では,(1) 悪1生細胞のcluster形成率,(2) 核の大小不同性,(3) 核径,(4) クロマチン性状 (粗),(5) クロマチンの不均等分布,(6) euchromatin,(7) 大型核小体,(8) 組織球,(9) tumordiathesis,(19) 正常内膜細胞の混在の10項目が有用で,(2) ~ (9) は低分化ほど, 逆に (1),(10) は高分化ほど, 顕著であった. また核径を実測し, 体癌分化度の低下とともに, 核の大小不同性の程度が増強することを確認した. ALP陽性は59.0%に得られ, 高分化型腺癌やAEHではより高く (80.0%), 逆に低分化型では陰性を示す傾向にあった (16.7%). 細胞化学的検索を併せ行うことにより, 体癌分化度の判定はより正確なものとなろう.
  • 重政 和志, 谷岡 慶英, 松田 博, 永井 宣隆, 江川 健士, 勝部 泰裕, 上馬場 是美, 藤原 篤
    1988 年 27 巻 4 号 p. 459-467
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    卵巣漿液性嚢胞腺癌10例を対象として, 酵素抗体法を用いたCA125およびEMAの免疫染色を行い, それらの組織局在および腹水中癌細胞, 中皮細胞, 組織球における染色性を検討した. また対照として非癌症例の腹水中中皮細胞におけるCA125およびEMAの染色性もあわせ検討し, 以下の結果を得た.
    (1) 摘出組織において, CA125およびEMAはそれぞれ90%(9/10), 100%(10/10) とともに高率に陽性所見が認められた.
    (2) 腹水中癌細胞においては, CA125およびEMAはともに10例全例 (100%) で陽性所見が観察され, またCA125-EMA二重染色によりCA125はEMAと比較し高率に癌細胞を検出し得る可能性が示唆された.
    (3) 癌症例および非癌症例における腹水中中皮細胞でのCA125の陽性率はともに高率であり, 一部の活動性中皮細胞においては癌細胞類似の染色性が観察された. 一方, EMAはごく一部の中皮細胞と反応するのみであり, また活動性中皮細胞における染色性も癌細胞と比較すると明らかに微弱であった.
    (4) 腹水中組織球においては, CA125, EMAともに陽性所見を認めなかった.
    以上の結果, CA125, EMAの両者を組みあわせて腹水細胞診に応用することにより, 原発巣の推定や良・悪性の鑑別の補助として利用し得ることが期待された.
  • 棟方 哲
    1988 年 27 巻 4 号 p. 468-476
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    婦人科悪性病変のflow cytometry (FCM) による解析の基礎として, 正常子宮腔部, 頸管, 体内膜の細胞分散法を種々考案し, それぞれのFCM histogramを作成した.
    摘出子宮51例の腟部扁平上皮, 頸管内膜上皮, 体内膜上皮に対して化学的分散法と機械的分散法により細胞分散を試みた. 以下の方法によるものが, もっとも良好な分散成績を得た.
    a) 子宮腟部扁平上皮: 2,000U/ml dispase 60分間とultra disperser 30秒間処理
    b) 子宮頸管内膜上皮: 1,000~2,000U/ml dispase 60分間とultra disperser 10秒間処理.
    c) 子宮体内膜上皮: 1,000~2,000U/ml dispase 60分間と21 gauge syringing 10回処理.
    上記方法にて分散された細胞は, propidium iodide (PI) とfluorescein isothiocyanate (FITC) の螢光二重染色を施したのちFACS440にて測定しhistogramを作成した. 正常子宮腟部扁平上皮, 好中球, 頸管内膜上皮, 体内膜上皮ではそれぞれ特異な螢光分布を示した.
    このことにより固形腫瘍のFCMによる解析が可能となった.
  • 抗BrdUモノクローナル抗体による酵素抗体二重染色法
    松田 壮正, 井筒 俊彦, 西谷 厳, 浅沼 美貴子, 笹生 俊一, 高山 和夫
    1988 年 27 巻 4 号 p. 477-483
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    アミラーゼ産生卵巣癌 (漿液性嚢胞腺癌) IV期症例にBromodeoxyuridine (BrdU) のinvivo標識を行い, 化学療法前後の摘出組織および捺印細胞標本について, 抗BrdUモノクローナル抗体を使用した酵素抗体法によりS期細胞の同定を行った. その結果, 組織における標識率は治療前11.6%, 治療後1%以下となり, 化学療法に伴ってS期細胞の著明な減少を認めた. これに伴って, 血中アミラーゼ値は化学療法中に正常値となったが, 治療後も残存組織中にアミラーゼ陽性細胞が検出され, 再燃時でもアミラーゼがマーカーとなることが示唆された. BrdU陽性細胞とアミラーゼ陽性細胞の分布を連続切片により検討したところ, 両者が同時に陽性を示した細胞は確認できず, BrdUとアミラーゼはそれぞれ独立したパラメーターとして使用できると思われた. 組織標本および捺印細胞標本に酵素抗体二重染色法を行ったがBrdUは核内に, アミラーゼは胞体内に, よいコントラストを示して染めわけられ組織と細胞の染色所見はよく一致した. 核の活動性の目安としてのBrdU染色と胞体の形質発現としての腫瘍マーカーを同一標本で分染できる二重染色は, 多数の均質な標本を得難い細胞診の場合にも有用な検査法であることが明らかになった.
  • 部位, 性, 年齢, 総義歯, 妊娠による口腔粘膜の変化
    宮下 隆敬, 矢部 茂季, 大沢 英夫, 城下 尚
    1988 年 27 巻 4 号 p. 484-497
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本報の目的は, 部位, 性, 年齢, 妊娠, 特にいまだ不明瞭である義歯による口腔粘膜への影響を細胞診により明確に把握し, 従来の口腔粘膜細胞診に関する知見を補強することである. 健康な小児, 成人, 高齢者 (義歯非装着者および総義歯装着者) の男女135名を対象として, 口腔粘膜6カ所の剥離細胞診を, 一部症例には組織学的検索を行った. 得られた所見の主なるものは, 以下のとおりである.
    1. 性, 年齢に関係なく硬口蓋粘膜および上・下顎歯肉で角化度が高く, 頬粘膜, 軟口蓋粘膜, 下口唇粘膜で角化度は低かった.
    2. 性差は小児以外で認められ, 成人, 高齢者で女性は男性に比して歯肉で角化の減少傾向を示した.
    3. 年齢差は男女ともに同傾向を示し, 小児から成人へと加齢すると歯肉で角化が高まり, 成人から高齢者へと加齢すると主に禽肉で角化の減少傾向が認められた.
    4. 義歯装着により男女ともに硬口蓋粘膜で顕著な角化の減少がみられ, 歯肉でも軽度であるが同様の傾向を示した.
    5. 妊婦は成人女性 (非妊婦) に比して主に歯肉で顕著な角化の減少を認めた.
    6. 剥離細胞所見は組織所見をよく反映していた.
  • 顕微螢光測光法を用いた癌細胞核DNA量ヒストグラムの解析
    小俣 好作, 田中 昇
    1988 年 27 巻 4 号 p. 498-506
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    超音波検査による成人病検診において発見され, 手術摘出された無症候性甲状腺乳頭癌104例のうち, 主に1cm以下の小型癌53症例について病理組織学的検討を行う一方, 螢光測光顕微鏡を用いて46症例の癌細胞核DNA量を測定した. その結果, 小型甲状腺乳頭癌は被包化の有無基質線維性結合織の多寡により4種類の組織パターンに分類され, また, 癌細胞核DNA量分布の違いにより3種類の螢光測光パターンに分類された. 両分類の問に相関がみられ, 被包化の程度の少ない, しかも基質線維性結合織量に比較し癌細胞の占める割合の多いタイプの小型乳頭癌では, 異倍数体細胞を含み, 細胞増殖能の高い測光パターンを示した. これらの結果は, 潜在性の甲状腺乳頭癌が顕在癌に成長する可能性についての指標を与えてくれるものと思われる.
  • 良性と悪性の比較
    伊藤 仁, Sayeste Demirezen, 篠田 玲子, 赤塚 由子, 覚道 健一, 長村 義之
    1988 年 27 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺悪性腫瘍および良性病変の組織標本, 捺印細胞標本を対象に細胞骨格蛋白の1つであるケラチンを免疫組織化学的に染色し, 悪性細胞と良性細胞における局在の差についての比較観察を行い, 癌化にともなうケラチンの変動について検討した. その結果細胞標本においては良性細胞は細胞質全体にびまん性に, そして特に塊状のより強い陽性反応を細胞質の片側あるいは両側に認め, 悪性細胞では細胞膜の内側にその膜に沿うように陽性局在を示す例が多く, また組織標本においても良性細胞は細胞質の腺腔側に塊状の強い陽性反応を認め, 悪性細胞では細胞膜近傍の細胞質内に細胞をふちどるように陽性局在を示し細胞標本とほぼ同様の結果を得た. これは乳腺組織の癌化において細胞骨格蛋白の1つであるケラチンの局在が変動することを示唆すると考えられる.
  • 沢田 勤也, 松村 公人, 池田 栄雄, 平田 哲士, 宮内 博幸
    1988 年 27 巻 4 号 p. 512-517
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    いわゆる肺硬化性血管腫は, 肺癌検診に伴い遭遇する機会の増加が予測される. そこで細胞診の立場から本症の確定診断をうるための基盤として7例について手術で得られた腫瘤の捺印塗抹像からの細胞形態を病理組織学的対応において検討した. 本症の細胞診上の特徴像は,
    (1) 乳頭状細胞配列を示す部分, 散在性平面的配列を示す細胞, 紡錘形間質細胞や形質細胞, 好酸球など慢性炎症性細胞と多彩な所見が認められた.
    (2) 乳頭状の細胞集団は, 腺癌のそれと鑑別を要するが, 腺癌とは細胞集団および個々の細胞の小さいこと, 異型性のより低いこと, 細胞質内粘液空胞の認められないことが相違点である. 一方, 時に本症に細胞の大小不同性, 核内封入体のみられることがある.
    (3) 散在性平面的配列を示す立方状細胞は, カルチノイド腫瘍と鑑別を要する. 核クロマチンの均等微細な点が相違するが, 柵状配列を示すことがあるので注意を要する.
    (4) 過誤腫とは, 乳頭状細胞集団の所見は, 類似しているが, 軟骨細胞, ムチン様物質の存否で鑑別の可能性がある.
    以上の検討により, 肺硬化性血管腫の確定診断としての細胞診がなされるべきものと考える.
  • 第一報組織化学所見および走査電顕像について
    福冨 順子, 岩田 隆子, 高橋 睦夫, 山下 勝, 村上 喜信
    1988 年 27 巻 4 号 p. 518-530
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    3例の体腔液 (腹水: 肝硬変を伴う肝癌1例, 胸水: 胃癌の胸膜転移1例, 悪性中皮腫1例) を培養し, その培養細胞について組織化学および走査型電子顕微鏡 (SEM) による観察を行い以下の結果を得た.
    1.3例のいずれからも中皮細胞の増殖が認められた. 増殖細胞は上皮細胞様 (E型), 線維芽細胞様 (F型), 巨細胞 (G型) の3型に分けられた.
    2. SEM像ではblebの多い体腔液中の中皮細胞に対し, 培養中皮細胞ではmicrovilli (MV) が豊富で, 体壁に付着している状態に類似していた. また, 同型の細胞内でもMVが長く分布が密なもの, 短くて疎なものなど, MVの分布形態に差を認めた.
    3. 悪性中皮腫の胸水から得られた培養細胞は, 培養前の中皮細胞に比べ, 大小不同や核小体の肥大など細胞異型がより明らかとなった. また, 活動性中皮細胞由来の細胞と比較しても細胞が不揃いで, pilingupなど悪牲を思わせる増殖態度を示した.
  • 中村 忍, 武田 康, 小林 和美, 吉田 喬, 大竹 茂樹, 伊藤 恵子, 神野 正敏, 平井 潤子, 松田 保
    1988 年 27 巻 4 号 p. 531-535
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞形態と同時に, in vivoでの細胞の増殖動態を観察する方法を検討する目的で, 急性白血病未治療例にbromodeoxyuridine (BrdU) を静脈内注射した後, 骨髄液塗抹乾燥標本を作製し, 抗BrdU抗体を用いて免疫組織科学的に白血病細胞のBrdU標識率 (labeling index, LI) を算定した.
    1. BrdU 200mg/m2をone shotで静脈内注射し, 30分後に骨髄穿刺を行い塗抹乾燥標本を作製したが, 骨髄中の白血病細胞のLIは3.0~7.5%と, これまで報告されているBrdU点滴法およびトリチウムチミジン法と同様な値であった. この結果, BrdUは迅速にS期の細胞に取り込まれ, 細胞の増殖動態の解析にきわめて有用と考えられた.
    2. 塗抹乾燥標本下で酵素抗体法間接法を用いてBrdU標識細胞を検出したが, 標識の有無の鑑別は容易であった.
    3. 細胞形態の観察のために, 後染色としてギムザ染色を施したが, 細胞の同定は可能なものの詳細な観察にはまだ改良を要すると考えられた.
    4. 良好な標本を作製するためには, 塗抹後ただちに2時間以上冷風にて乾燥することが重要と思われた.
  • 伊藤 富士子, 森 敦雄, 小川 喜市, 花之内 基夫, 林 治生
    1988 年 27 巻 4 号 p. 536-540
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    32歳女性の頸部腺上皮内腺癌の一例を経験した. 膣部擦過細胞診で異型腺細胞を発見し, 頸管内擦過細胞診でも同様の腫瘍細胞がみられ, 高分化型腺癌を疑った. 拡大子宮全摘出術を施行し, 病理学的には子宮頸部上皮内腺癌であった.
    細胞診上, 腫瘍細胞は, シート状配列ないしは柵状に配列する高円柱細胞で, 核は大きくクロマチンは微細~中等度穎粒状で軽度増量, 核小体は目立たなかった.
  • 加藤 拓, 高橋 久雄, 清川 尚, 武田 敏, 堀内 文男, 山本 浩嗣
    1988 年 27 巻 4 号 p. 541-548
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    まれなProliferating Brenner月重瘍の1例について捺印細胞像を中心に報告した-Proliferating Brenner腫瘍は悪性Brenner腫瘍と同様, その発生率はきわめて低くLow potential malignancyに位置づけられるBrenner腫瘍の一型である. 本腫瘍の細胞学的報告はいまだされておらず当院で経験した症例の特徴的な細胞像は, 1. 異型移行上皮様細胞, 2. 円柱上皮様細胞, 3. 扁平上皮化生様細胞の存在であった. 肉眼的には14×13×12cmの嚢胞性腫瘍で内腔に乳頭状増殖を示し, 組織学的にはProliferating Brennerの診断基準をみたし, 問質への浸潤, 他臓器への転移などは認められなかった. 電顕的にも移行上皮様細胞, 腺上皮様細胞, 扁平上皮化生様細胞を確認することができた。Brenner腫瘍はときに子宮内膜の増殖が合併してみられることから, ホルモン産生能を指摘する報告もあるが本腫瘍には認められなかった.
  • 谷村 晃, 藤吉 康明, 政池 こずえ, 柳井 豊秀, 深見 常晴
    1988 年 27 巻 4 号 p. 549-552
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本症例は44歳, 男性で斜台に発生した脊索腫である. 手術時の捺印細胞診で腫瘍細胞は好酸性細胞質, 小型の円形の核, 細胞表面には繊毛様構造を有していた. 迅速凍結標本でもこれらの腫瘍細胞は立方状, 円柱状を呈し柵状配列をとり, 細胞表面には同様の繊毛様構造を有していた. ホルマリン固定標本によるヘマトキシリン・エオジン標本ではPAS, AIcianblueに濃染する軟骨様基質に埋没するような星荘状の腫瘍細胞を認めたが, これらの細胞には明らかな繊毛様構造は認めなかった.
    脊索腫は細胞診診断上, 臨床像, 部位, 肉眼所見から困難ではないが, 本症例のように捺印細胞診, 凍結迅速標本で細胞縁に繊毛様構造物をみたことは腺癌の頭蓋底転移と鑑別する必要がある. また, 予後の上で脊索腫は軟骨様, 非軟骨様の2型に分けることは重要であるが, 本症例では細胞診レベルの型分けは困難であった.
  • 田中 健次, 小松 彦太郎, 石原 尚, 田島 紹吉
    1988 年 27 巻 4 号 p. 553-557
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    手術材料スタンプ標本にて推定した胸椎脊索腫に細胞像, 免疫組織化学, 電顕像を加え報告した. 症例は33歳男性, 胸部X線異常陰影を主訴として来院, X線検査にて手拳大の腫瘤を認め縦隔腫瘍の疑いにて手術, 摘出腫瘍の細胞診標本を作製した. 異型細胞は粘液様物質を背景に平面的集塊をなして出現し, 腫瘍細胞は多辺形から紡錘形で細胞質はライトグリーンに淡染性で単房または多房性の空胞がみられた. 一部に印環様細胞も認められた. 核は中心性で2核のものが多く, 少数ながら異型の強い細胞多核細胞も認められた. 類円形核でクロマチンは顆粒状または網状で増量しており, 小型または大型の核小体を認めた. 病理組織像では脊索腫に特有な泡状細胞 (physaliphorouscell) を認め, 壊死物質も認められた. 免疫組織化学では, NSE, S-100蛋白に強陽性を示した. 電顕的には, 多数のmicrofilamentsが認められ, microvilli, desmosome, グリコーゲン顆粒がみられた. 泡状細胞の空胞の由来については,(1) RER,(2) 小空胞の集簇,(3) 細胞間貯留物質の陥入が考えられた.
  • 穿刺吸引細胞診像と組織像について
    廣田 誠一, 中川 芳樹
    1988 年 27 巻 4 号 p. 558-563
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診で悪性腫瘍の転移を疑われ, 外科的摘出術により頸動脈球腫瘍と確定診断された1例を経験した.
    症例は60歳女性で, 右頸部腫瘤を主訴に受診し穿刺吸引細胞診が施行された. 孤立性の細胞や一部では集塊を成す像がみられ, 裸核状細胞と細穎粒状で豊富な細胞質を持つ大型細胞より成っていた. 核はおおむね円形から類円形で明瞭な核小体がみられ, 紡錘状核も存在した. 悪性腫瘍のリンパ節転移が疑われたがその組織型は特定できなかった. 摘出術により腫瘍は右総頸動脈分岐部に位置し, 組織像も好酸性穎粒状細胞質を持つ細胞を主体とする上皮様細胞の胞巣状増殖より成り, 典型的な頸動脈球腫瘍の像で悪性像はみられなかった. Grirnelius染色は陽性で, 免疫組織化学的には上皮様細胞がneuron specific enolase陽性, 線維状細胞はvimentin, S-100蛋白・factor VIII陽性, cytokeratin, keratin, desminは陰性であった.
    頸動脈球腫瘍は, 発生率の低さ・発生部位の危険性から穿刺吸引細胞診が行われることは少なかったが, 頸部腫瘤に対する細胞診の頻用される近年遭遇する機会が増えると予想され, 鑑別診断の一つとして念頭において検鏡する必要があると考えられた.
  • 川井 俊郎, 角田 尚久, 久保野 幸子, 斉藤 達也, 斉藤 建
    1988 年 27 巻 4 号 p. 564-570
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    胸腺カルチノイドの3症例を経験したので報告した.
    1例は術前に穿刺吸引細胞診にて診断し得た. 3例とも腫瘍による圧迫症状または上大静脈症候群により発症し, 胸部X-Pにて異常陰影を指摘された.
    得られた細胞はいずれも大小不同の軽度な円~類円形の核, 細類粒状のクロマチン, ライトグリーンに淡染する細胞質を有し, ときにロゼット形成を示す定型的なカルチノイドの所見であった. 電顕的にはいずれも神経内分泌穎粒が認められた.
    組織学的には, 髄様増殖巣の中央が壊死に陥る“Ba11”構造を特徴とする異型カルチノイドで, 2例で転移を認め, 1例は上大静脈症候群発症の9年後に転移により死亡した
  • 福永 昇, 亀田 典章, 藤岡 旭, 下関 敏江, 野崎 治重, 片桐 逸夫, 中島 典子
    1988 年 27 巻 4 号 p. 571-578
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺原発骨肉腫の発生頻度は比較的低く, 全乳腺悪性腫瘍の0.5~3.0%とされており, 本邦における既報告例も十数例を数えるに過ぎない.
    本症例は49歳・女性の左乳房下にみられた小腫瘤で, 化骨性筋炎に類し, 異型類骨組織, 異型軟骨組織および線維肉腫様組織が層状配列 (Zoning) を示していた.
    細胞診では偏心性の不正円形核, 陥入や切れ込みを有し, 粗穎粒状の分散クロマチンと核縁の肥厚が目立ち, 胞体限界の不整な異型骨芽細胞ど類円形核をもち, 核縁が菲薄で, 核質の明るい異型軟骨芽細胞を類別し得た. さらに, 長楕円形核を有する線維芽細胞様細胞および多核の異型巨細胞を認めた. これらの細胞は, 光顕および電顕的観察より得られた細胞学的特異性をおおむねよく反映しており, 塗抹標本における背景への配慮も診断上きわめて重要なことを示唆していた.
  • 村山 史雄, 赤荻 栄一, 村山 由美子, 鬼塚 正孝, 中川 晴夫, 大森 美恵子
    1988 年 27 巻 4 号 p. 579-583
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    68歳男性の左肺上葉に発生した肺芽細胞腫の1例を経験し, その細胞像を検討したので報告する. 術前の肺穿刺吸引にて上皮系および間質系の多彩な細胞像が得られた. 上皮系の細胞は, 泡沫状の細胞質をもち核に丸みがある低分化腺癌と思われるものと, 裸核状で核型の不整および大小不同が著明な大細胞癌と思われるものであった. 一方, 間質系細胞は, 長円形の核で流れ状に配列する線維系細胞と, 不整のある紡錘形の核で泡沫状細胞質をもち明らかに悪性と思われるものであった. それぞれ肺芽細胞腫の多彩な組織像と対応させることができた. 肺芽細胞腫の細胞診による診断は困難であることが多いが, 上皮系および問質系細胞が認められた場合, それぞれの多彩性に注目することが診断の助けになると思われた.
  • 特に細胞学的所見について
    原 享子, 山内 政之, 亀井 孝子, 山本 陽子, 森脇 昭介, 山本 洋介
    1988 年 27 巻 4 号 p. 584-588
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で咳漱, 心窩部痛を主訴とし, 胸部X線検査で右下肺野の腫瘤影を指摘された. 気管支擦過細胞診で, 腫瘍細胞は胞体が比較的豊富で均質, 核は楕円形で1~3個の明瞭な核小体を有していた. 剖検では右肺下葉に径10cmの出血および壊死巣を伴う境界明瞭な黄白色の充実性腫瘍が認められた. 組織所見では腺腔形成を示す上皮性部分と未熟な間葉系細胞や横紋筋, 軟骨様成分の混在を認め, 肺芽細胞腫と診断した.
  • 三浦 弘之, 加藤 治文, 早田 義博, 三浦 玲子, 横山 明子, 海老原 善郎
    1988 年 27 巻 4 号 p. 589-592
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    喀痰細胞診のみ陽性で, その局在診断のつかないTX癌を経験した. 症例は60歳男性. 高度喫煙者で胸膜炎治療中に行った喀痰細胞診で扁平上皮癌を指摘され来院した. 当院初診時の喀痰細胞診は陽性を示したものの, その後数回にわたる郵送法による喀痰細胞診, 気管支鏡下に行った洗浄・擦過細胞診, 生検すべて陰性であった. 初診時から11ヵ月目の喀痰細胞診で再び陽性となり, 通算6回目の気管支鏡で左B5aにポリープ型の腫瘍を認め, 擦過細胞診および生検で扁平上皮癌と確認されたが胸部X線上無所見肺癌であった. さらに外科的治療後の外来followup中, 血便精査にてS状結腸に山田IV型の隆起性病変を認め, ポリペクトミー材料の組織学的検索によりcarcino. ma in adenomaと診断された.
    レントゲン無所見肺癌では, その局在診断に苦慮することが少なくなく, 多発癌や多臓器との重複癌も多い. 喀痰細胞診によるfollowupと注意深い気管支鏡検査はもちろんのこと, 他臓器癌の小さな徴候をも見逃さず, それらの早期発見に努めなければならない.
  • 本山 悌一, 石原 法子, 藤田 謙一, 飛田 賢一
    1988 年 27 巻 4 号 p. 593-601
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    メルケル細胞癌は, 索状型, 中間細胞型, 小細胞型に細分類されている. これらの3亜型を組織像, 細胞像, 超微形態, 免疫組織化学的所見より比較検討し, 診断上の問題点と細胞診がこれらの腫瘍の正しい診断にいかに貢献しうるかを追求した.
    細胞の大きさによる組織亜型の分類には, 組織標本よりも細胞診標本の方がより容易でかつ合理的であった. 索状型は, Pap. 標本により核径が10μ以上の細胞が70%以上を占めるもの, 小細胞型は核型7.5μ以下の細胞が50%以上を占めるものとして分類することが適当と考えられた.
    メルケル細胞癌の診断は, 最終的には電顕により神経分泌様顆粒の存在を確認することによってなされる. しかし, 特に中間細胞型や小細胞型では顆粒を持つ細胞が少なく, 検出困難なことがある. NSEは全ての亜型に陽性であるが, ホルマリンにより失活しやすい. 一方, エタノール固定はNSEの免疫活性に影響を及ぼさない. したがって細胞診検体におけるNSEの免疫染色は, この腫瘍の診断上重要な役割を果しうる.
  • 福間 啓造, 片渕 秀隆, 藤崎 俊一, 岡村 均, 徳永 英博
    1988 年 27 巻 4 号 p. 602-603
    発行日: 1988/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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