日本臨床細胞学会雑誌
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悪性胸腺腫の1剖検例-穿刺生検細胞診による組織像の推移
万代 光一森脇 昭介土井原 博義原 亨子中西 慶喜山内 政之山本 陽子亀井 孝子佐伯 逸子
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1988 年 27 巻 6 号 p. 978-983

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抄録

症例は42歳の女性嚥下困難を主訴とし来院. 前縦隔下方の腫瘍を指摘され, 穿刺生検細胞診にて当初悪性リンパ腫が疑われた. 再検査にてリンパ球優位型の胸腺腫と診断経過中に赤芽球瘍の合併を指摘され, また, 画像診断にて肝転移も疑われた. 化学療法や放射線治療にもかかわらず, 両側の肺炎などの全身感染症の増悪があり, 全経過5年7ヵ月で死亡した.
剖検時, 前縦隔下方から右胸膜および横隔膜は胼胝性に肥厚し, 出血巣に混って灰白色の腫瘍の浸潤が認められ, 組織診断は上皮細胞優位型の悪性胸腺腫であった. 肝の実質内には胸腺腫の転移は認められず, 横隔膜への浸潤性増殖であったと解した.
肺, 子宮・腟, 直腸, 膀胱, 舌および扁桃には巨細胞封入体感染症を伴う膿瘍形成が認められた. 脾は79であり, 組織学的にも低形成を示し, 患者の免疫不全状態に何らかの関与があったものと推定された.

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