日本臨床細胞学会雑誌
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口腔粘膜の走査電顕的研究
義歯装着による細胞表面の変化を中心として
宮下 隆敬城下 尚
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1989 年 28 巻 1 号 p. 19-35

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抄録

義歯装着による口腔粘膜への影響を走査型電子顕微鏡 (以下, SEMと略記) を用いて検討した. 検索対象者は義歯装着者10例, 義歯非装着者10例である. 採取部位は, 硬口蓋粘膜と歯槽頂粘膜とした. 上記2ヵ所の粘膜と剥離細胞を採取し, その表面微細構造をSEMで検討した. 得られた所見は以下のとおりである.
1. 粘膜のSEM像で, 義歯装着により硬口蓋および歯槽頂では, 蜂巣型主体の微細構造から散在性陥凹型主体へと変化し, 細胞表面の平坦化を示した. この他に轡曲型を数例認めたが, この形態は義歯装着者のみで観察された.
2. 剥離細胞のSEM像で, 義歯装着による変化が顕著であったのは硬口蓋における角化, 表層細胞と歯槽頂における中間層細胞であり, 粘膜のSEM像の変化とほぼ同様な傾向を示した. しかし, その他の部位における変化は明瞭でない. また, 細胞種と各微小堤の出現率には関連性が認められた. 1さらに剥離細胞と粘膜のSEM像を比較検討し, 細胞の表裏の微細構造に差がある可能性を認めた.
3. 剥離細胞で堤防状や裂溝状の線状構造が認められたが, これは細胞境界ではなく剥離した細胞の圧痕と考えられた.

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