1989 年 28 巻 6 号 p. 806-817
実験化学療法のモデルとしてDMBA誘発ラット卵巣腺癌を同系ラットに腹腔内移植し, FIGOの臨床進行期分類III~IV期の腹水貯留した進行癌モデルを作成した. これにCDDPを腹腔内投与し, 投与後6日後まで経時的に屠殺し, 投与群と非投与群との腹水細胞および移植組織の変化を比較検討した結果, 投与群は次の所見を認めた.
1) 腹水中有核細胞の増加が認められ, そのうちわけはリンパ球が増加し, 癌細胞は減少していた.
2) トリパンブルー超生体染色による死細胞率が増加した.
3) 癌細胞の形態変化として細胞の大型化, 単離化, 多核化, 細胞質内空胞が特徴的であった.
4) 核内空胞, 核濃縮, 核破砕, 核融解, スリガラス状核, 泡沫状核, 細胞質エオジン好性などの変化も出現した.
5) 組織においても類似した変化がみられた.
これらの形態変化はCDDP投与において腹水細胞診による薬剤効果を知る一つの情報と成り得る可能性を示唆するものと思われた.