日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部HPV-DNA陽性症例における細胞像の検討
陰性例との比較において
高村 邦子田中 博志田崎 民和森 一郎蓮尾 泰之薬師寺 道明
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1991 年 30 巻 4 号 p. 670-676

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抄録

Dysplasiaでfollow upしている症例および, 細胞診異常を指摘され, 当科を受診した145例について, HPV-DNA検出スクリーニングを行った. その結果, HPV-DNA陽性であった45例と陰性例のうちの任意に選択した46例について, 細胞学的検討を行い, 次の結果を得た.
1.145例中, 45例 (31.0%) にHPV-DNAが検出された.
2.細胞診のクラス分類が上昇するに従い, HPV-DNAの陽性率も増加していた.
3.細胞診と組織診の不一致について, HPV-DNA陽性例では31.1%のover diagnosisを認め, その原因として, parakeratosis, dyskeratosisを示す細胞の出現多数のためが42.9%と最大の原因であった.
4.HPV-DNA陽性例のみにkoilocytosisを認めたが, その出現率は15/45例 (33.3%) と低く, koilocytosisは特異性には優れているが, 感受性は低い.
5.Parakeratosis, dyskeratosis (55.6%), multinucleus (64.4%), metaplasticcell (57.8%) は出現率が高く, またこれらの組合せの出現率は, さらに高く, 非特異的ではあるがHPV感染症の補助診断として有用である.
以上のことからkoilocytosisおよび他の補助診断により細胞診でのHPV感染症診断率は向上すると思われる.しかしながら, 細胞診にてHPV感染を診断できるものは限られ, 分子生物学的手法を用いた検査をもって診断することが望ましいと思われた.

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