日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
良性乳腺疾患に対する穿刺吸引細胞診
小池 綏男寺井 直樹土屋 真一渡辺 達男高橋 洋子松山 郁生丸山 雄造
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 31 巻 6 号 p. 905-912

詳細
抄録

過去7年3ヵ月間に長野県がん検診センターの乳腺外来で穿刺吸引細胞診を施行した良性乳腺疾患917例について検討した.
穿刺吸引細胞診による正診 (class I・II) 率は嚢胞が94.4%と最も高く, ついで, 炎症性偽腫瘍92.3%, 良性葉状腫瘍87.5%, 炎症85.7%, 線維腺腫80.3%, 乳腺症79.9%の順であり, 乳管内乳頭腫は50.0%と低かった.判定不能率はその他良性腫瘍が25.0%と最も高く, ついで, 乳腺症が13.1%, 乳管内乳頭腫6.3%, 線維腺腫5.2%の順であった.
誤陽性 (class IIIb以上) 率は良性乳腺疾患全体では2.9%であったが, 乳管内乳頭腫が25.0%と最も高く, 良性葉状腫瘍は8.3%, 乳腺症は3.7%, 線維腺腫は3.5%であった.誤陽性例27例中16例は生検で, 9例は経過観察により良性疾患と診断したが, 2例には乳房切断術を施行してしまった.穿刺吸引細胞診は良性乳腺疾患の診断に有用であるが, 誤陽性判定は過剰診療につながるおそれがあるので, 穿刺感なども考慮して慎重に対処しなければならない.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top