術中と術後に得た胆嚢原発小細胞癌2例の捺印細胞像を検討した. いずれの症例も細胞相互の結合性は弱く, indianfile状配列はまれであったが, 小細胞癌を示唆するmoldingなど核圧排像を伴う細胞集塊が認められた. しかしながら, 術中例では低分化腺癌を思わせる細胞集塊の出現が数的に優位である一方, 術後例は異型性カルチノイドや悪性リンパ腫を思わせる孤立散在性の細胞が多いため, 全体像の趣きは症例間で異なっていた. 細胞個々はN/C比大で, その円~類円形核は1~2個の小型核小体を有していた. クロマチンは, 術中例では微細顆粒状~顆粒状が多く, 術後例では顆粒状のものが目立った. 組織学的に術中例には扁平上皮化生, 術後例には腺癌が混在していたが, 術中例は組織保存が良好であるのに対し, 術後例には自己融解が目立った. これらより捺印細胞像における趣きの相違は, 自己融解の有無によるものと考えられた. 同時に, 捺印細胞診のみで小細胞癌の確診を得ることは必ずしも容易でないと考えられた.