抄録
過去8年間に当科で施行した妊婦に対する子宮頸部擦過細胞診より異常細胞診率, 子宮頸部初期病変発見率を検討した. また, 子宮頸部高度異形成および上皮内癌症例について症例を呈示するとともに, 妊娠中の子宮頸部初期病変の診断上の注意点やfollow up成績について検討した.
1. 過去8年間の妊婦における異常細胞診発見率は, 1.5%であった.また, コルポスコピーおよび生検による精査で子宮頸部初期病変と診断されたのは, 0.82%であった.
2. 子宮頸部高度異形成および上皮内癌の症例は8例みられたが, 7例において組織診が, 細胞診に対してover diagnosisであった. また, 5例に多数の腺管侵襲が認められた.
3. 子宮頸部高度異形成および上皮内癌の8例中6例が分娩後に消失した. 消失の原因については種々の要因が考えられるが, 生検のover diagnosisが最も大きな要素ではないかと考えている.
4.妊婦に子宮頸部初期病変が検出される率は, 非妊婦と比較してほぼ同等である. よって, 妊婦検診においても子宮癌検診を徹底し, 異常細胞診症例に対しては, コルポスコピー下に生検を施行し, 精査・厳重な管理が必要である.