抄録
呉共済病院での過去4年間の子宮内膜細胞診2346例中, 偽陽性および偽陰性の誤判定は12例存在した. この誤判定例を, 他施設の細胞検査士16名による追試判定結果と診断別, 経験年数別に比較し, さらに誤判定の原因を細胞学的, 組織学的に検討した.
偽陽性は7例 (16%) あり, 内訳は萎縮性内膜 (4例), 臨床情報のなかったIUD挿入例 (1例), 流産後の合胞性内膜炎で絨毛上皮細胞の出現がほとんどない例 (1例), 変性の強い正常内膜 (1例) であった. 偽陰性は5例 (26%) で, 高分化型内膜型腺癌 (4例), 採取部位の不適当な腺棘細胞癌 (1例) であった.
追試検査の誤判定率は, 萎縮性内膜21%, IUD挿入例13%, 合胞性内膜炎7%, 正常内膜50%, 高分化型内膜型腺癌44%, 腺棘細胞癌81%であった. 萎縮性内膜では経験年数11年以上の群で偽陽性率が減少する傾向を認めたが, その他は経験年数と誤判定率に関連はなかった.
誤判定は, 萎縮性内膜と合胞性内膜炎では再生上皮様異型細胞, IUD挿入例では知識・情報不足, 正常内膜では細胞変性, 腺棘細胞癌では不適切な採取手技に起因し, 高分化型内膜型腺癌と一部の萎縮性内膜では細胞診上判定困難な症例が存在した.