日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部から擦過採取される細胞数とスライド標本に塗抹される細胞数
手塚 文明秀城 浩司及川 洋恵鈴鹿 邁伊藤 圭子東岩井 久
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1994 年 33 巻 3 号 p. 463-467

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抄録

従来から子宮頸部細胞診に用いられる木製スパーテル擦過採取・用手塗抹標本に含まれている上皮細胞の数量と分布を推定した.7人の受検者から試料を採取し, スライドガラスに塗抹された細胞 (B) およびスパーテルに残存した細胞 (B) をそれぞれ保存液中で剥離, 均一に分散する細胞浮遊液とし, この液から作られたThinPrep標本を用いて上皮細胞の数と面積分布を計測した.(A) と (B) の和は採取細胞の総数,(B) は塗抹されず廃棄される細胞数に相当する.
結果は症例間でかなり大きく異なったが, 平均して採取細胞数が780,215個, そのうちスライドガラスに塗抹された細胞が85,543個, 廃棄される細胞が694,672個であった.すなわち採取細胞の約10%が塗抹され検鏡の対象となるに過ぎず, 約90%が廃棄されてしまっていた.また採取試料と塗抹標本にそれぞれ含まれる細胞の面積の平均ないし分散は7例中4例で有意差を示した.したがって従来の用手塗抹標本は, 採取細胞のごく一部を含んでいるに過ぎないだけでなく, 細胞構成からみて必ずしも適正な抽出標本とはいえない.

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