日本臨床細胞学会雑誌
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血管肉腫: 4例の細胞学的検討
林 亮中野 嘉子小川 勝佐々木 直志柿島 裕樹石田 剛岡 輝明
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1994 年 33 巻 6 号 p. 1033-1038

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抄録

組織学的に血管肉腫と診断された4症例について細胞学的検討を行った.症例は43歳から79歳にわたり, 男性3例, 女性1例, 原発部位は頭頸部皮膚と心臓がそれぞれ2例であった。基本的細胞所見として, ライトグリーン淡染性の紡錘形ないし多稜形の細胞が, 出血や炎症性背景の中に散在性, あるいは中規模集塊を形成して観察された.腫瘍細胞の核は偏在傾向を示し, ときに多核の腫瘍細胞も認められた. 核のクロマチンは顆粒状を呈し, 核小体が1~ 数個認められた. 2列に並ぶ配列をとる腫瘍細胞や, 細胞質内にhaloを伴う赤血球様物質を容れた腫瘍細胞が観察された.免疫組織化学およびレクチン化学的には, 腫瘍細胞は第VIII因子関連抗原 (F VIII RA), ビメンチン, Q-Bend-10, Ulex europeaus agglutinin I (UEA-I) 陽性であった.
血管肉腫は, その組織構築に病理学的診断根拠をおいているため, 細胞学的診断は困難な場合が多い. しかし, 腫瘍細胞が2列に並ぶ配列や, 腫瘍細胞質内のhaloを伴う赤血球様物質の存在は血管肉腫を示唆する細胞学的特徴と判断された. さらにF VIII RA, Q-Bend-10, UEA Iなど血管内皮マーカーの免疫組織化学的, レクチン化学的検索を併用することにより, さらに正確な推定診断が可能であると考えられた. Q-Bend-10, Ulex europeaus agglutinin I (UEA-I) 陽性であった.

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