1994 年 33 巻 6 号 p. 1079-1085
Human papilloma virus (以下HPVと略す) 感染を細胞診で診断するため, 核異常細胞の核所見を形態学的に分類し, おのおののHPV capsid antigen陽性頻度を検索した. さらに, 陽性頻度の高い核所見をもとにPapanicolaou標本でのblind testを行い, 診断の可能性を検索した. capsid antigenの検出はPapanicolaou標本脱色後, 酵素抗体間接法で行った.
capsid antigen陽性の異形成10例に出現した核異常細胞の核所見で, capsid antigen陽性率は均質無構造が33.2%, 封入体様所見が48.4%であり, 細顆粒状の2.4%や粗顆粒状の1.2%より高値を示した. また, 封入体様所見を呈した中でchromatin増量核は50.3%, 褐色核は56.4%と高値であった.
blind testでは, 均質無構造とchromatin増量を示す封入体様所見が同一標本に認めた症例をHPV感染例とした.33例の異形成において, 23例がHPV感染と診断され, そのうちの19例 (82.6%) にcapsid antigenが検出された. 褐色を示す封入体様所見は14例に出現し, 13例 (92.9%) にcapsid antigenが証明された.
以上の成績より, 均質無構造やchromatin増量ならびに褐色を示す封入体様所見はHPV感染の診断に有力な核所見であることが示唆された