日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
副甲状腺疾患の術中細胞診
笹野 公伸
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 34 巻 1 号 p. 121-125

詳細
抄録

高カルシウム血症を呈する副甲状腺機能亢進症の治療の基本は病変を外科手術的に摘出することであり, その際摘出された組織が副甲状腺か否か, 副甲状腺であれぼPTH過剰の原因が過形成か腫瘍であるのかを鑑別するのに術中迅速診断がきわめて重要となる. この術中迅速診断において病変のスタンプ標本を検討する細胞診は, 副甲状腺とリンパ腺および甲状腺組織との鑑別にきわめて有用である. また副甲状腺機能亢進を伴っている副甲状腺細胞中には脂質がほとんど認められないことから, 風乾標本のギムザおよびDiff-Quick染色の所見からPTHの合成, 分泌過剰の有無を知ることができる. 一方副甲状腺病変において, 腺腫は原則的に4つの副甲状腺中1つに発生しており過形成は4つとも機能亢進を呈している. このため摘出された副甲状腺の1つにおいて細胞内脂肪滴がほとんどない機能亢進を示した場合, もう1つの副甲状腺で同様の細胞所見を呈していれば過形成と考えられ, 細胞内に脂肪滴がみられる正常もしくはatrophyの細胞所見が認められれば腺腫によって副甲状腺機能亢進症が生じたと想定される. このように副甲状腺機能亢進症の手術時の術中迅速診断においては, 細胞診所見のみで十分な診断が可能である.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top