日本臨床細胞学会雑誌
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腟原発悪性黒色腫
10症例の臨床細胞学的検討
山脇 孝晴手島 英雄古田 則行加藤 友康都竹 正文藤本 郁野山内 一弘荷見 勝彦
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1995 年 34 巻 6 号 p. 1058-1063

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抄録

癌研究会附属病院婦人科にて経験した, 腟原発悪性黒色腫10症例の臨床細胞学的検討を行った. 初診時の腟腫瘍表面の擦過細胞診はすべて陽性であり, 以下の結果を得た.
1) 剥離細胞の形態は, 円形細胞型, 紡錘細胞型, 多形細胞型が混在して出現し, 病理組織学的亜分類とは必ずしも一致しなかった.
2) 腫瘍細胞の大部分は散在性に出現したが, 4例 (40%) において一部に類上皮様配列を呈する小細胞集塊を認めた.
3) 核内空胞は9例 (90%), 偏在性核は7例 (70%), 多核細胞は6例 (60%) と高率にみられた.
4) N/C比は細胞形態により異なり, 円形細胞では高く, 紡錘細胞, 多形細胞では比較的低かった.
5) 核小体は, 9例 (90%) において, 顕著で目立っていたが, 巨大核小体の出現は低率であった.
6) メラニン顆粒は, melanotic melanoma 8例すべてにおいて, 腫瘍細胞のみならず, 組織球内にもみられた. 病理組織診断でamelanotic melanomaであった2例のうち1例に, 腫瘍細胞内にきわめて少量のメラニン顆粒が認められた.
腟原発例では, 核内空胞などの悪性黒色腫の特徴所見の出現頻度は低率であるとされてきたが, 今回の検討で, 腫瘍表面の擦過により, 十分量の細胞検体が採取され, 悪性黒色腫の特徴所見の出現頻度は高率であることが明らかになった.

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