1996 年 35 巻 6 号 p. 517-523
肺癌切除例89例を対象に腫瘍の捺印細胞標本を用い, 増殖細胞核抗原 (PCNA) およびp53の免疫染色を行いそれぞれの発現率と予後の関連について検討した.1) PCNA発現率が25%未満の群は25%以上の群に比較し予後が良かった (p<0.001).絶対的治癒切除例 (p<0.001), p53陽性例 (p<0.01) でも同様の結果がみられた.2) p53発現率と予後の間には切除例全例では有意差はみられなかった (p<0.1) が, 絶対的治癒切除例で陰性例が陽性例に比較して予後が良かった (p<0.01).3) Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析でp値が5%以下のものは, 根治度, 性別, 細胞異型, PCNA発現率であった.
以上よりPCNA発現率は独立した予後因子であり, 細胞増殖能および生物学的悪性度の指標として重要と考えられた.また, p53発現率も絶対的治癒切除例で予後因子としての有用性が認められた.