日本臨床細胞学会雑誌
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小腸間膜に認められたsolid cystic tumorの1例
山口 直則今村 好章嶋本 知子河田 尚子中山 啓三安田 迫之
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1997 年 36 巻 2 号 p. 216-222

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抄録

小腸間膜に発生したsolid cystic tumor (以下SCT) の1例を経験したので報告する. 症例は62歳女性で, 画像検査にて小腸間膜に腫瘤を指摘され, 腫瘍摘出術が施行された. 腫瘍は小腸間膜内に限局し, 膵との連続性はなく, 膵や他の臓器には腫瘍は認められなかった. 腫瘍は肉眼的に境界明瞭な被膜を有し, 割面では充実部と嚢胞部が混在していた. 穿刺吸引細胞診では, 出現細胞は比較的均一で, 孤在性~腺房状, あるいは毛細血管を軸とした偽乳頭状集団として存在していた. クロマチンは細穎粒状であり, 小型で明瞭な核小体を1~数個認めた. 核形は円~類円で軽度の核縁不整を示した. 組織学的には好酸性胞体を有する腫瘍細胞が充実性~偽乳頭状配列を示して増生し, 核分裂像は認められなかった. 免疫組織化学的にはα1-アンチトリプシン (AAT) とneuron-specific enolase (NSE) が陽性で, 電顕的にはライソゾームやチモーゲン様顆粒, あるいは神経内分泌顆粒が認められた. 以上の所見より小腸間膜に発生したSCTと診断した. 細胞診では偽乳頭状集団としての出現が特徴的と思われたが, 臨床所見, 免疫組織化学および電顕所見も考慮して総合的に診断する必要があると思われた.

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