日本臨床細胞学会雑誌
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肝内小結節性病変の穿刺吸引細胞診
広岡 保明小西 伊智郎佐藤 尚喜山代 豊山口 由美貝原 信明
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1997 年 36 巻 3 号 p. 273-277

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抄録

超音波誘導下穿刺吸引細胞診が施行された肝内小結節性病変42例を対象とし, 細胞診誤陰性例の検討を行った.対象の内訳は, 肝細胞癌20例 (高分化型6例, 中分化型13例, 低分化型1例), 転移性肝癌8例, 肝良性病変14例で, 全例腫瘍の長径2cm以下で孤立性病変であった.また, 高分化型肝細胞癌の細胞学的特徴について肝硬変症と比較検討した.
42例中穿刺吸引細胞診で正診できなかったのは, 細胞異型が軽度で悪性と読めなかった高分化型肝細胞癌2例と, エコーでの描出が不明瞭で正確に穿刺できなかった高分化型肝細胞癌1例, 中分化型肝細胞癌1例および転移性肝癌1例の合計5例であった.
高分化型肝細胞癌と肝硬変症の間で細胞学的所見に差があったのは, 核の大小不同性, 細胞質の大きさと大小不同性, N/C比, 細胞密度, 核クロマチン量などであった.
以上より正診率向上のためには, 細胞採取技術を確実にすることと, 高分化型肝細胞癌の細胞学的特徴である小型でそろった核, N/C比が大, クロマチン量増加, 細胞密度が高度であるというような所見に注意して細胞判定を行うことが重要と思われた.

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