抄録
1995年1月から12月までに原三信病院泌尿器科から提出された7683件の尿細胞診標本で, 尿細胞診から2ヵ月以内に組織検査が行われた195症例のパパニコロウ染色された尿細胞診標本 (282件) を対象とし, 同心円状配列を示す細胞集塊をpair cell (PCと略) と定義し, それをさらにsingle PC, double PCとmulticellular PCの3種類に分類し, 組織学的診断を標準として, PC検出の尿中移行上皮癌診断における感度, 特異度, 陽性適中率, 陰性適中率を算出し, 比較検討した. カテーテル尿と膀胱洗浄尿についてもその臨床的意義を検討した. 尿中移行上皮癌診断におけるsingle PC検出の感度は28.2%で, 特異度, 陽性適中率はともに100%で, 陰性適中率は20.3%であった. double PCやmulticellular PCでもほぼ同様の結果が得られた. すなわち, pairce11検出の感度は28.2%とそれほど高くないが, 特異度および陽性適中率はきわめて高く, PCが検出された場合の尿路腫瘍診断の精度はきわめて高いが, 逆に, 陰性適中率が低いため, 尿中細胞診標本上でPCが検出できない場合は良性尿路疾患を否定することはできないという結果であった. 自然尿における尿細胞診標本上でのPC検出は尿路上皮腫瘍の細胞診断に特異度, 陽性適中率のきわめて高い有用な所見と思われる.