日本臨床細胞学会雑誌
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多数の破骨細胞型巨細胞の出現を認めた肺動脈原発肉腫の1例
神尾 多喜浩須古 修二田上 圭二一門 美江吉田 慎一平山 統一中島 昌道
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2000 年 39 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

癌や肉腫にはときに破骨細胞型巨細胞 (以下, OGCと略す) が出現することがある.今回, われわれは多数のOGCの出現を認めた肺動脈原発の肉腫を経験したが, 細胞学的, 組織学的に悪性線維性組織球腫 (以下, MFHと略す) との鑑別が困難であったので報告する.
症例は66歳, 男性.右心不全症状で来院し, 精査にて肺動脈血栓塞栓症が疑われ手術となった.腫瘍は肺動脈内膜に連続した隆起性病変であり, その割面は粘液腫様であった.捺印細胞診では出血性背景に紡錘形細胞が孤立散在性ないし集籏性に出現し, 1ないし数個の明瞭な核小体とライトグリーンに淡染する泡沫状胞体が観察された.核は楕円形ないし類円形で, 核の大小不同や不整が目立ち, クロマチンは細顆粒状で均一に分布していた.これらの腫瘍細胞以外に, しばしば数個の核を有する多核巨細胞が観察された.組織学的には紡錘形細胞が分葉状に増殖し, 一部では間質が粘液腫様な腫瘍集塊も認めた.その分葉状集塊には, 紡錘形細胞以外に細胞異型に乏しく多数の核を有するOGCが多数出現していた.免疫染色では紡錘形細胞はdesmin, vimentin陽性で, α-smooth muscle actin, S-100 protein, KP-1などは陰性であった.OGCはKP-1のみ陽性であった.

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