抄録
甲状腺乳頭癌に合併した硝子化索状腺腫 (hyalinizing trabecular adenoma, 以下HTA) の1例を経験した.症例は53歳女性, 前頸部腫瘤を主訴に来院.甲状腺左上極に径1.5cm, 右下極に径2cmの腫瘤を触知した. 左右の腫瘤に対し穿刺吸引細胞診 (fine needle aspiration cytology, 以下FNA) を施行したところ, 左右ともに核溝, 核内封入体を有する腫瘍細胞がみられたため左右いずれも乳頭癌と診断した. 手術後の病理組織像では, 左腫瘍は高分化型乳頭癌であった. 右腫瘍は周囲を薄い被膜に被われた腫瘍で腫瘍細胞は索状に配列し, 胞体は好酸性で間質は硝子様だった.腫瘍細胞の核には多数の核溝, 核内封入体がみられ, PAS染色で間質が陽性を示し, 免疫染色でThyroglobulin陽性, CEA, Calcitonin陰性だったためHTAと診断した. また, MIB-1免疫染色で細胞質および細胞膜に強陽性像を示した.
同一甲状腺上に発生した乳頭癌とHTAのFNA所見を比較したが, 今回得られた細胞診標本では乳頭癌とHTAを細胞像で鑑別することは困難と思われた. しかし, 病理標本のMIB-1免疫染色が乳頭癌とHTAの鑑別診断に有用であることが判明した.