日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部明細胞腺癌の1例
今枝 義博堀部 良宗丹羽 邦明中沢 和美米谷 国男是松 元子村上 正基笠原 正男
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2000 年 39 巻 5 号 p. 323-326

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抄録

背景: 子宮頸部明細胞腺癌は子宮頸部腺癌の4%といわれ, 比較的まれな疾患である.今回, 術前に診断し得た子宮頸部明細胞腺癌の1例を経験したので報告する.
症例: 74歳, 女性.不正性器出血を認め近医より当院入院となった.生検は施行することができなかったが, 子宮頸部細胞診にて明細胞腺癌と診断され, 患者の年齢および全身状態を考慮し, 単純子宮全摘術および両付属器切除術が施行された.術後病理診断で子宮頸部明細胞腺癌と確定診断された.術前細胞診の細胞所見は, 出血性背景に多彩な像を示す腫瘍細胞が比較的平面的および散在性に出現していた.多形性に富んだ細胞質を有する大小不同が著しい腫瘍細胞, シート状に出現して細胞質が豊富で均一な大きさの腫瘍細胞, 大型裸核腫瘍細胞およびhobnail様腫瘍細胞がみられた.
結論: 子宮頸部明細胞腺癌の細胞診による確定診断はhobnail細胞以外の腫瘍細胞が単独で出現した場合はきわめて困難であると考えられた. しかしながら, 子宮頸部明細胞腺癌は予後が悪いことより, 本症例のように腫瘍細胞が多彩な像を示した場合には特に留意し, 他腺癌との鑑別診断をすることが望まれる.

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