日本臨床細胞学会雑誌
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肺門部早期扁平上皮癌における喀痰標本上の異型細胞像の検討
上皮内癌および平滑筋層内初期浸潤癌の比較
赤松 節姫路 由香理松田 真由美長澤 優子山田 美弥子板垣 由香理本間 慶一
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2000 年 39 巻 6 号 p. 423-428

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抄録

目的: 喀痰標本における肺門部早期扁平上皮癌由来の細胞像を検索し, 病巣進展による出現様式の違いを検討する.
方法: 摘出組織により上皮内癌および癌浸潤が平滑筋層内に留まっていることが確認された症例の, 蓄疾標本上に出現していた異型扁平上皮細胞を, 細胞質の染色性, 細胞径, 細胞形状, 核数, N/C, 集塊状況などの細胞学的因子について計測し, カイ二乗検定による有意差を検討した.
成績: ライトグリーン好性細胞の出現率では上皮内癌が有意に高く (P<0.05), 上皮内癌病巣の角化傾向の弱さが示唆された.平滑筋層内初期浸潤癌では奇形細胞の出現率が有意に高く (P<0.001), 病巣の拡大によって癌細胞にvariationが現れることが示唆された.また, 浸潤癌の集塊状細胞群はすべて小集塊状に出現し, 細胞接着性の低下が認められた.いずれの症例においても単在性細胞の80%以上はオレンジG・エオジン好性細胞で占められ, そのうち60%以上が円形細胞であった.また, 細胞径では30μmが最も多く, 30μmまでの小型細胞が60%以上であった.
結論: 喀痰中に出現する早期癌細胞は, 異型性は弱いが出現様式の詳細な観察で病巣進展の推計は可能である.

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