日本臨床細胞学会雑誌
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穿刺細胞診における乳腺小葉癌と硬癌の鑑別
町田 智恵渡辺 達男土屋 眞一
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2001 年 40 巻 5 号 p. 540-547

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抄録

目的:近年増加している乳房温存療法の可否に, 大きな影響を及ぼすとされる小葉癌について, その細胞学的特徴と硬癌との鑑別点を検討した.
方法:浸潤性小葉癌 (ILC) 18例, 狭義の硬癌 (PSC) 23例の計41例を対象に, 1. 細胞配列, 2. 核形および核の配列, 3. 明調・暗調細胞, 4.核クロマチン分布, 5.細胞特性 (GCDFP-15; gross cystic disease fluid protein-15) の5項目について, 細胞像を中心に組織, 免疫組織化学および微細形態学的に比較検討した.
結果:1. 細胞配列は線状配列に特徴がみられ, ILCは細胞質辺縁が丸みを帯び, 数珠状形態を呈することが多く, PSCは細胞質辺縁が直線状であった. 2. 核形および核の配列はILCは円形-楕円形, 核間距離はほぼ均等であったが, PSCは圧排され不整形, 縦並び状を呈していた. 3. 明調・暗調細胞に関してはILCの細胞質の染色性がほぼ明調, 均一であるのに対し, PSCでは明調・暗調を示す細胞が混在していた. 4. 核クロマチン分布はILCは正染色質が, PSCでは異染色質がその主体を占めていた. 5. GCDFP-15の免疫染色では, ILCで40.0%, PSCでは20.0%で, 特にILCのvariant typeが高い陽性率を示した.
結論:組織学的類似性の高いILCとPSCの細胞学的鑑別点として, 上記の5項目でほぼ目的が達成できると思われた.

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