2001 年 40 巻 6 号 p. 632-635
背景:Norma1-sized ovary carcinoma syndromeとは, 腹腔内にびまん性に悪性転移病巣が認められる臨床状態であるが, 卵巣は正常大とされている. 乳癌を合併する本症例を経験したので報告する.
症例:64歳. 腹水貯留と左乳腺腫瘍のために入院となる. 腹水細胞所見とCA125の値より, 強く卵巣癌を疑い試験開腹術を行う. 腹水は4llあり卵巣は肉眼的に正常大であった. 腹水細胞所見は, 重積性のあるマリモ状集塊が出現し, 核密度が高く結合が強度で, 核小体の腫大, クロマチンの増量および核縁の不整がみられ, 腺癌と診断された. 乳腺腫瘍生検および摘出腫瘍の病理所見は, papillotubular typeの乳癌と診断され, 卵巣病理所見は, 好塩基性の比較的小型の癌細胞からなり, 乳頭状に増殖する傾向が強く卵巣原発の漿液性乳頭状腺癌と診断された. cisplatin+cyclophosphamideが奏効し, 根治手術後外来にて化学療法を継続している. 現在再発なく経過良好である.
結論:Normal-sized ovary carcinoma syndromeの診断に腹水細胞所見とCAl25が有用であった。