日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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40 巻, 6 号
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  • 古田 則行, 佐藤 之俊, 都竹 正文, 神田 浩明, 石川 雄一
    2001 年 40 巻 6 号 p. 565-570
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:少量生検材料で脂肪腫様脂肪肉腫 (LT-WDL) と脂肪腫の鑑別において, 圧挫細胞診の観察点を明らかにし, さらに, 病理組織標本と有用性を比較する.
    対象と方法:1) 圧挫細胞診標本と病理組織標本で, LT-WDLと脂肪腫の成熟脂肪細胞の核径を測定し, 両者を比較した. LT-WDL5例と脂肪腫10例を対象とし, マイク'ロメーターを使用して長径と短径を測定した. 両群の測定値をt検定で比較検討した.
    2) LSAの成熟脂肪細胞数と異型脂肪芽細胞 (ALB) の出現数を圧挫細胞診標本と病理組織標本で測定し比較した.
    結果:LT-WDLと脂肪腫の成熟脂肪細胞の核径測定値を比較すると, LT-WDLの成熟脂肪細胞の核は脂肪腫における核より小型で短かった (P<0.001).
    また, 穿刺材料の圧挫細胞診標本は同病理組織診標本よりも, 観察腫瘍細胞数が圧倒的に多く, したがって, 容易にALBも検出できた.
    結論:少量生検材料におけるLT-WDLと脂肪腫の鑑別には圧挫細胞診が有用である.
  • とくに肝細胞癌との鑑別について
    加藤 拓, 九十九 葉子, 高橋 久雄, 徳泉 美幸, 諏訪 朋子, 上原 敏敬
    2001 年 40 巻 6 号 p. 571-574
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:肝病変の中で肝細胞癌と非癌病変の細胞学的鑑別の補助診断として, CD34の免疫細胞化学的染色の有用性を検討した.
    方法:材料は手術および剖検にて得られた肝病変38例 (慢性肝炎4例, 肝硬変5例, 限局性結節性過形成2例, 肝細胞癌27例) の擦過細胞診標本であり, 免疫細胞化学的 (ABC法) にCD34の局在を詳細に検討した.
    成績:局在は細胞集塊中の洞様毛細血管にみられた.肝細胞癌は全例明瞭な局在を示し, 限局性結節性過形成は一部陽性を示した.その他の非癌病変はすべて陰性であった.肝細胞癌の陽性血管は高分化型で細い血管が密にみられたが, 中分化, 低分化, 未分化と進展するに従い太い血管と細胞集塊辺縁の血管が混在し, そして移行がみられた.
    結論:肝病変において免疫細胞化学的にCD34の局在を検索することは肝細胞癌と非癌病変の鑑別, また肝細胞癌の分化度の程度を推察するにあたり有用であると考える.
  • とくに疑陽性例の扱いについて
    鈴木 啓仁, 市原 周, 嵩 眞佐子, 杉浦 文美, 玉置 和仁, 恒川 宮子
    2001 年 40 巻 6 号 p. 575-582
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺細胞診における「疑陽性」判定の意味をより明確に臨床側に伝えるために欧州乳癌検診ガイドラインの細胞診カテゴリー分類 (カテゴリー分類) に注目し, その有用性について検討した.
    方法:1992~2000年に当院で「疑陽性」と判定された乳腺細胞診77例をカテゴリー3 (C3) とカテゴリー4 (C4) に再分類し, それぞれの病理診断と比較検討した.また超音波, マンモグラフィによる画像診断とC3, C4分類細胞診のOverevaluationおよびUnderevaluationを比較した.
    成績:カテゴリー分類の内訳は, C3;26.0%, C4;74.0%であり, C3の病理診断の内訳は, 良性;85.0%, 悪性; 15.0%, C4の病理診断の内訳は, 良性; 3.5%, 悪性;96.5%であった. 画像診断とC4を比較したOverevaluationは47.1%, 11.8%, 画像診断とC3を比較したUnderevaluationは10.3%, 5.2%であった.
    結論:カテゴリー分類は, 細胞診「疑陽性」の内容をより適切に臨床側に伝えることができ画像診断の情報と総合することで乳癌術前診断をより精密にできる.
  • 野本 靖史, 木下 孔明, 上原 敏敬, 加藤 拓, 高橋 久雄, 諏訪 朋子, 齋藤 博子, 馬場 雅行
    2001 年 40 巻 6 号 p. 583-588
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:縦隔原発びまん性大細胞型悪性リンパ腫はきわめてまれである. 今回経皮的針吸引細胞診にて胸腺腫が疑われ, 術後びまん性硬化型B細胞性大細胞型リンパ腫と診断された1例を経験した.
    症例:20歳女性. 検診の胸部X線写真にて縦隔影の拡大を指摘された. 胸部CTでは前縦隔に10×13cm大の腫瘍を認めた. 術前経皮的針吸引細胞診では, 背景に壊死を有し, リンパ球に混在して, 上皮性結合を疑わせる細胞集塊が多数認められ, 胸腺腫を疑った. 手術が行われ, 術中捺印細胞診では, 上皮性結合を示す部分は少なく, ほとんどはリンパ球類似の大型の細胞で構成され, 細胞異型, 核異型が強く, 細胞質は好塩基性であり, 悪性リンパ腫と診断した. 病理組織所見では腫瘍細胞は大型な異型細胞からなり, 間質の線維化, 硝子化を伴っていた. 異型細胞は免疫染色の結果B細胞性であり, びまん性硬化型B細胞性大細胞型リンパ腫と診断した.
    結論:経皮的針吸引細胞診では胸腺腫が疑われたが, 鑑別疾患としてこの疾患を念頭に置いておけば, 線維化により上皮性にみえたとしても, 集塊外に少数散在していた大型の細胞が異型リンパ球であり, 悪性リンパ腫の診断が可能であったと考えられた.
  • 高見澤 明美, 川口 研二, 金本 淳, 宮川 恭一, 中村 恵美子, 清水 敏夫
    2001 年 40 巻 6 号 p. 589-593
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:日本肺癌学会では, 管腔内に粘液分泌が著明であるか, 癌細胞が粘液内に浮遊する傾向が著しい粘液産生性腺癌を粘液結節性腺癌として分類している. これはWHO分類にはなく, 報告例が少ないためその臨床病理学的特徴は不明瞭である.
    症例:70歳の女性. 集団検診にて左上肺野の異常影を指摘され, 当科受診. 胸部CTにて, 左肺S3cに内部に気管支透亮像を有する不整な腫瘤影を認めた. 経気管支的ブラシ擦過細胞診では, 疑陽性で確診に至らなかったため, 胸腔鏡下左上葉部分切除を予定した. しかし, 胸腔鏡検査時の特異的な肉眼所見より粘液産生性腺癌と診断. その場で左上葉切除術が施行され, 病理組織にて粘液結節性肺腺癌と診断された.
    結論:本腫瘍は, 細胞・組織学的には粘液産生の高度な細気管支肺胞上皮癌を主体とする孤立結節性高分化腺癌である. その胸腔鏡像や病理所見は特徴的であり, 予後良好の可能性がある肺腺癌の一型と考えられる.
  • 坂本 寛文, 森 良雄, 吉見 直己, 水野 義己, 原 一夫, 金子 千之
    2001 年 40 巻 6 号 p. 594-597
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:マイボーム腺癌が胸水および喀痰中に腫瘍細胞として認めることはきわめてまれである. 今回われわれは, 転移性マイボーム腺癌の1例を経験したのでその胸水および喀痰における細胞像を中心に報告する.
    症例: 77歳, 女性. 左下眼瞼腫瘤に気づき, 急速に増大してきたため切除術を施行. マイボーム腺癌と診断された. 術後4ヵ月で胸水が出現. 胸水中には泡沫状の明るい細胞質と核異型の目立つ大型腫瘍細胞を認めた. 脂肪染色も陽性を示し, マイボーム腺癌の転移と診断した. その後, 同様の細胞が喀痰中にも認められた.
    結論:自験例は, 比較的定型的な細胞像であり, 脂腺癌の細胞像を理解し, 同時に脂肪染色をすることにより, 本腫瘍の診断は可能と考えられた.
  • 井上 信行, 木下 幸正, 大泉 えり子, 前田 智治, 古谷 敬三, 佐川 庸
    2001 年 40 巻 6 号 p. 598-600
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:metaplastic carcinomaの一亜型であるrnatrix-producing carcinomaを経験したので報告する.
    症例:77歳, 女性, 平成12年2月右乳房腫瘤を自覚し近医受診. 腫瘤が増大傾向のため当院外科に紹介された. 穿刺吸引細胞診では, 粘液様背景に小集塊, 一列状配列を示す2相性の欠如した細胞塊が散見され粘液癌を疑った. 組織診では, 粘液様基質内に小型の腫瘍細胞が索状ないしは小胞巣を形成する比較的細胞成分の豊富な部分と, 間質が軟骨で細胞成分の乏しい部分を認め, matrix-producing carcinomaと診断した.
    結語:細胞診で粘液と考えていた背景の一部に軟骨様細胞を認めた. 軟骨様細胞を認めた場合は本疾患も念頭に置く必要があると思われる.
  • 西田 秀昭, 橋本 哲夫, 池田 和隆, 田中 卓二, 勝田 省吾
    2001 年 40 巻 6 号 p. 601-605
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:皮膚の神経内分泌癌とも呼ばれるメルケル細胞癌の発生頻度は低く, その細胞所見に関する報告も少ない. われわれは耳介後部に発生したメルケル細胞癌の捺印細胞像を観察する機会を得たので, その細胞所見を報告する.
    症例:86歳女性. 平成11年8月より左耳介後部腫瘤に気づき, 近医を受診.切除を勧められるが放置. 平成12年1月になって切除目的で当院形成外科受診. 同月術中組織診断にてメルケル細胞癌を疑い, 左耳を含めた腫瘤切除が施行された.
    切除腫瘍の捺印細胞所見で腫瘍細胞は, 主にシート状に出現し, 小細胞集団も散見された. 細胞集団は, 索状配列を示し, かつ円形の腫瘍細胞を取り囲むように互いに吻合し, 三日月形に圧迫された小集団として認められた. 個々の腫瘍細胞は, ほとんどが裸核状で細胞質に乏しく, 核は円形-類円形, クロマチンは細穎粒状に増加して認められた.
    結論:本疾患の診断に細胞診はあまり用いられていないが, 細胞所見は比較的特徴があり臨床所見を加味すれば診断は可能であると考えられた.
  • 川崎 辰彦, 尾上 一馬, 木寺 義郎, 原田 博史, 杉田 保雄
    2001 年 40 巻 6 号 p. 606-609
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:腎血管筋脂肪腫は近年画像診断の進歩により超音波検査などで診断が容易になったが, 依然悪性腫瘍との鑑別が困難な場合がある.今回術中迅速診断時に提出された腎血管筋脂肪腫の細胞診標本を検討する機会を得たので報告した.
    症例:48歳, 男性.検診で数年前から腎腫瘤の指摘を受けるが放置, 今回の検診で腫大を認めたため摘出手術となった.腫瘍は脂肪織, 平滑筋, 血管からなるが, 細胞診上3種類の細胞成分を鑑別するのは困難であった.核は小型でN/C比が小さく, 胞体内に大型空胞を持つ脂肪細胞と紡錘形細胞を示す平滑筋細胞との鑑別は容易であった.
    結論:2種類の細胞形態を認識することで血管筋脂肪腫を予測することはできると思われた.しかしまれであるが悪性の経過を示す症例もあるため, 総合的な診断が必要と思われた.
  • 木屋 千恵子, 若木 邦彦, 室坂 千鶴子, 石澤 伸
    2001 年 40 巻 6 号 p. 610-615
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:膀胱に発生する明細胞腺癌はきわめてまれでその報告は少ない. 今回私達は自然尿に腫瘍細胞が出現した非定型的膀胱明細胞腺癌の1例を経験したので報告する.
    症例:59歳, 女性. 頻尿, 肉眼的血. 尿があり, 尿閉となり受診した. 自然尿の細胞診では好中球, 赤血球, 壊死物質を背景に, 大小不同の淡明で豊富な細胞質を有する細胞と濃染性の細胞質を有する細胞が散在性に多数出現していた. クロマチンは細穎粒状に増量し, 核は偏在しており, 一部に多核巨細胞を認めた. 摘出標本では組織学的に多形性に富む腫瘍細胞が胞巣状に増殖しており, 一部で明細胞を伴う乳頭状や腺管腔を形成し, 鋲釘型細胞が管状構造をなしていた. 両者の組織像に移行を認め, 酵素抗体法の結果とあわせて膀胱明細胞腺癌と診断した.
    結論:本症例では細胞診上の特徴として, 腫瘍細胞の散在性出現, 淡明で豊富な細胞質, targetoidvacuole, 細胞質辺縁の明瞭化, 核の偏在性がみられた.
  • 石井 陽子, 若木 邦彦, 石澤 伸, 木屋 千恵子, 斉藤 勝彦, 笹原 正清
    2001 年 40 巻 6 号 p. 616-621
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:杯細胞カルチノイドはまれな腫瘍で, 虫垂に最も好発することで知られる.腺癌と同様な悪性度を示し予後が悪いとされている.しかしながら定型的カルチノイドと同様にその核異型は弱く, 細胞診での診断が困難な腫瘍のひとつである.今回われわれは直腸原発杯細胞カルチノイドの1例を経験したので, その捺印細胞像, 組織像, 免疫組織化学所見および電顕像について報告する.
    症例:患者は71歳の男性で, 直腸腫瘍に対しMiles手術が施行された.術中迅速時の捺印細胞診では, 腫瘍細胞の胞体は泡沫状で, 核は偏在傾向を示した.核は異型性に乏しく, クロマチンは軽度増量し微細顆粒状を示した.核小体は目立たない.組織学的には, 粘液を有する杯細胞様腫瘍細胞と定型的カルチノイド様腫瘍細胞からなるが, いずれの成分も免疫組織化学的には神経系マーカーが陽性を示した.また, PAS染色とchromograninAの二重染色所見および電子顕微鏡所見でも, 腫瘍細胞胞体内に内分泌穎粒と粘液穎粒が共存することが証明された.
    結論:細胞診では, 核所見は定型的カルチノイドに類似し, しかも偏在核で粘液を有する所見を観察できれば診断は可能であると考えられた.
  • 殿岡 幸一, 加藤 哲子, 矢作 祐一, 遠藤 泰志, 緒形 真也, 田村 元, 本山 悌一
    2001 年 40 巻 6 号 p. 622-625
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:甲状腺の腺脂肪腫はまれな腫瘍であり, その細胞診所見に関する報告は国内外を通してきわめて少ない.
    症例:52歳, 女性.検診で甲状腺右葉下極に腫瘤を指摘され, 穿刺吸引細胞診が行われた. 微細穎粒状の広い胞体をもつ細胞がシート状もしくは小集塊を形成して多数認められ, follicular adenoma (oxyphilic cell type) を推定した. 上記の細胞集塊とともに大小の類円形空胞も数多く認められたが, その時点では標本作製時のアーチファクトと考えた. 甲状腺右葉切除術が施行され, 術中, 腫瘍割面から捺印細胞診も行われたが, これにも穿刺吸引細胞診と同様の類円形空胞が多数出現していた. 組織学的に, 腫瘍は好酸性で豊かな胞体をもっ濾胞上皮細胞と豊富な成熟脂肪細胞の両成分から構成される腺脂肪腫であった. ここで改めて細胞診標本を見直してみると, 類円形空胞としてみえていたものはほとんどが脂肪細胞であった.
    結論:甲状腺腺脂肪腫の存在を知っていれば, 穿刺吸引細胞診で推定することは十分可能であるが, 脂肪細胞であることを確認するためにはGiemsa染色の併用が有効であると考えられる.
  • 那須 直美, 北村 隆司, 増永 敦子, 楯 玄秀, 光谷 俊幸, 土屋 眞一, 渡辺 糺, 太田 秀一
    2001 年 40 巻 6 号 p. 626-631
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:われわれは組織学的に確定診断が得られた乳腺管状癌3例を経験したので, その摘出腫瘤穿刺細胞標本の細胞像を中心に報告する.
    症例:患者は乳房腫瘤を主訴とする41歳から48歳の女性で, 組織学的腫瘍径は全例が10mm以下であった. 細胞像はすべての症例の背景に少数の紡錘形裸核細胞がみられた. 腫瘍細胞は結合性が強く, 筋上皮細胞との二相性を認めない管状あるいはシート状集団として出現し, 細胞異型は軽度であった. また, 集塊の核密度は高く, 全例に腺管の太さが核3個程度で明瞭な内腔を有する小腺管や, 先端部の尖った管状集団, および集塊最外層の細胞の核が辺縁に対して直角に並ぶ管状集団が観察された.
    結語:細胞異型に乏しい管状癌の診断では, 筋上皮細胞との二相性の欠如を前提とした,(1) 核密度が高い細胞集団の出現 (2) 集団の太さが核3個程度の明瞭な管腔を有する小腺管, および先端部が尖った管状集団.(3) 集塊最外層の核が辺縁に対して直角に並ぶ管状集団などの標本中にみられる管状集団の構造異型, あるいは出現性の異常に着目して総合的判定することが必要であると思われた.
  • 伏木 弘, 結城 浩良, 寺畑 信太郎, 田所 猛, 三井 由紀子, 大橋 美香, 熊野 睦子
    2001 年 40 巻 6 号 p. 632-635
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:Norma1-sized ovary carcinoma syndromeとは, 腹腔内にびまん性に悪性転移病巣が認められる臨床状態であるが, 卵巣は正常大とされている. 乳癌を合併する本症例を経験したので報告する.
    症例:64歳. 腹水貯留と左乳腺腫瘍のために入院となる. 腹水細胞所見とCA125の値より, 強く卵巣癌を疑い試験開腹術を行う. 腹水は4llあり卵巣は肉眼的に正常大であった. 腹水細胞所見は, 重積性のあるマリモ状集塊が出現し, 核密度が高く結合が強度で, 核小体の腫大, クロマチンの増量および核縁の不整がみられ, 腺癌と診断された. 乳腺腫瘍生検および摘出腫瘍の病理所見は, papillotubular typeの乳癌と診断され, 卵巣病理所見は, 好塩基性の比較的小型の癌細胞からなり, 乳頭状に増殖する傾向が強く卵巣原発の漿液性乳頭状腺癌と診断された. cisplatin+cyclophosphamideが奏効し, 根治手術後外来にて化学療法を継続している. 現在再発なく経過良好である.
    結論:Normal-sized ovary carcinoma syndromeの診断に腹水細胞所見とCAl25が有用であった。
  • 小椋 聖子, 清水 恵子, 小林 八郎, 豊國 伸哉, 桜井 幹己
    2001 年 40 巻 6 号 p. 636-640
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:近年, 診断法や治療法の進歩に伴う治癒率の向上とともに, 婦人科領域の重複癌発生率が上昇している. 婦人科領域の細胞診断の際に重複癌を疑う像に遭遇することがあるが, その判定に苦慮することは少なくない.
    今回われわれは, 境界悪性卵巣粘液性腫瘍の再発との鑑別が困難であった子宮頸部上皮内腺癌の1例を報告する.
    症例:55歳, 女性. 3年前に右卵巣腫瘍破裂のため, 右付属器摘出術が施行され, 右卵巣境界悪性粘液性腫瘍, 腸上皮型, Ic期と診断された. 外来での経過観察中, 子宮頸部擦過細胞診にて異型腺細胞集団が認められ, 子宮頸部腺系病変あるいは卵巣粘液性腫瘍の再発が疑われた. 単純子宮全摘術および左付属器摘出術が施行され, 摘出標本の組織診で子宮頸部上皮内腺癌と診断された. 子宮体部, 左付属器に悪性所見は認められなかった.
    結論:婦人科領域における重複癌の診断においては, 細胞所見のみならず臨床所見や画像診断を加味した総合的な判断が必要である.
  • 永井 公洋, 荒井 祐司, 丸塚 浩助, 山内 憲之, 山口 昌俊, 池ノ上 克
    2001 年 40 巻 6 号 p. 641-645
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:術前にtestosterone産生卵巣腫瘍と診断し, まれなsteroid cell tumor, unclassified typeであった症例を経験したので, 主に術中捺印細胞診像, 病理組織所見を報告する.
    症例:19歳の女性, 無月経で近医を受診した. 骨盤内腫瘍のため当科を紹介受診した. 肥満と男性化徴候もみられ, 内分泌学的にはtestosterone高値を示した. 内診, 超音波検査, MRI検査では左卵巣腫瘍が疑われ, testosterone産生卵巣腫瘍と術前診断した. 左付属器切除術を行い, 腫瘍を摘出した. 術中捺印細胞診では, 淡く泡沫状の豊富な細胞質を有する腫瘍細胞が主に散在性にmonotonousに出現していた. 核は円~ 類円形で不整はなく, クロマチンはやや粗で均等に増量し, 核縁の肥厚はない. 核小体は円形で腫大していた. Reinke結晶は認めなかった. 病理組織学的には, 細胞質は豊富で明るいものと好酸性に染まるものがみられた. 核は円形から類円形で, 腫瘍細胞はびまん性に増殖していた. 核異型は弱く, 核分裂像もまれであった. 脂肪染色では, 細胞質がオレンジ色に染色された細胞を多数認めた. Reinke結晶はなかった. 以上の所見より卵巣steroid cell tumor, unclassified typeと診断した.
    結語:clinical course, 病理組織所見, 脂肪染色より卵巣steroid cell tumor, unclassified typeと診断したが, 術中捺印細胞診でも, monotonousな出現の仕方から, 鑑別診断の1つとして推定可能ではないかと示唆された.
  • 清水 元彦, 土岐 利彦, 加藤 清, 小西 郁生, 堀川 美栄子, 林 茂子, 石井 恵子
    2001 年 40 巻 6 号 p. 646-649
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部・内膜細胞診に扁平上皮細胞を伴った腺癌細胞が出現した卵管癌の1例を報告する.
    症例:症例は67歳女性, 不正性器出血を主訴に来院し, 子宮頸部細胞診と内膜細胞診に, 異型腺細胞の集団と異常角化を示す多数の扁平上皮細胞を認めた. 腫瘍性背景を認めないこと, 出現腺癌細胞に軽度の変性像を認めること, 良性内膜腺細胞を比較的多数認めることなどから, 子宮外の腺癌で扁平上皮成分を伴う腫瘍を疑った. 病理所見では, 左卵管内に長径0.5cmの小さな腫瘍を認め, 組織学的に扁平上皮成分を伴う中等度分化型の漿液性乳頭状腺癌であった.
    結論:子宮内膜細胞診に扁平上皮成分を伴う腺癌が認められる場合は, 内膜原発の腺癌の頻度が高いが, 本症例のように子宮外の腺癌もまれにはおこりうるので, 細胞所見には注意が必要である.
  • 藤原 明子, 上国 愛, 箕岡 深雪, 中川 達也, 台丸 裕
    2001 年 40 巻 6 号 p. 650-651
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a case of solitary fibrous tumor (SFT) of the pleura with special reference to stamp and scratch cytology. A 49-year-old man showed a shadow on chest X-ray film. The cytologic appearance was variable, showing dimorphic tumor cells, monolayered cell clusters, isolated cells, collagen bands, and inflammatory cells such as foamy histiocytes and lymphocytes. Tumor cells are reactive for both CD-34 & vimentin, and negative for cytokeratins.
  • 木口 英子, 山田 茂樹, 太田 雅弘, 秋嶋 由里, 浦尾 弥須子
    2001 年 40 巻 6 号 p. 652-653
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a case of pleomorphic adenoma with cystic squamous differentiation of the parotid gland. Needle aspirates of the tumor showed numerous squamous cells without a mucous background. Cuboidal epithelial cells and stromal cells were few. Histopathologically, cystic change in the pleomorphic adenoma formed a large central space lined with stratified differentiated squamous epithelia. Incorrect diagnosis is prevented by paying sufficient attention to determining benign squamous differentiation in pleomorphic adenoma.
  • 大谷 方子, 辻本 史朗, 三浦 妙太, 長嶋 洋治
    2001 年 40 巻 6 号 p. 654-655
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    A 6 year-old boy was diagnosed with infected renal cysts that were removed in pieces. Cytological examination of purulent fluid from the cysts during surgery contained a few isolated keratinizing aquamous cells and hair shafts with inflammatory background. Intrarenal cystic teratoma is very rare. Differential diagnosis of intrarenal cysts is paramount, especially in children, to ensure the correct choice of therapy. In our case, we found cytologic examination duning surgery to be useful in dianosis.
  • 遠藤 泰彦, 新崎 勤子, 三角 珠代, 根本 淳, 江間 律子
    2001 年 40 巻 6 号 p. 656-657
    発行日: 2001/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a case of nasal polyps with stromal atypical cells in a 5-year-old boy, whose cytologic features simulated rhabdomyosarcoma. A polypoid lesion of the left nasal cavity grew rapidly and showed a necrotic, hemorrhagic surface. Aspiration cytology showed spindle to polygonal cells with 1 or 2 oval nuclei in the necrotic and hemorrhagic background. Conspicuous nucleolei were observed in these cells. Cytologically, possible embryonal rhabdomyosarcoma was initially suspected. However, histology disclosed a few atypical cells without mitosis scattered in edematous stroma, and finally was interpreted as nasal polyps with stromal atypia. It was suggested that the number of atypical cells, low mitotic rate, and absence of intracytoplasmic glycogen in atypical cells are important in cytologically differentiating this from rhabdomyosarcoma.
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