日本臨床細胞学会雑誌
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穿刺吸引細胞診で推定し得た乳腺悪性葉状腫瘍の2例
宮嶋 葉子伊藤 仁梅村 しのぶ安田 政実長村 義之
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2003 年 42 巻 1 号 p. 49-54

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抄録

背景:穿刺吸引細胞診材料により診断し得た悪性葉状腫瘍を2例経験したので報告する.
症例:症例1は46歳, 症例2は44歳の女性. 主訴はともに乳腺B領域の腫瘤であった. 腫瘍細胞は結合性を欠き, 比較的豊富な細胞質を有し, 大小不同や多形性を示していた. 核形は円形~楕円形で, 核クロマチンは微細で増量し, 著明に腫大した核小体を有していた. また多核巨細胞が認められた12例ともに背景に嚢胞の存在を示唆する泡沫細胞と正常乳管上皮細胞が出現していた.
結論:鑑別診断としては間質肉腫, 癌肉腫, 紡錘細胞癌などが考えられたが, 泡沫細胞, 正常乳管上皮細胞の出現, 悪性上皮性細胞の欠如などの所見から鑑別可能であった.
葉状腫瘍の治療は悪性であっても正常乳腺を一部含めた局所切除で十分である, といわれることから術前の穿刺細胞診で悪性葉状腫瘍を推定すること, すなわち, 良, 悪性だけでなく組織型を推定することは過剰な治療を防ぐためにもきわめて重要と考えられる.

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