日本臨床細胞学会雑誌
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42 巻, 1 号
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  • 笹川 基, 西野 幸治, 本間 滋, 児玉 省二, 高橋 威
    2003 年 42 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:卵巣癌の診断における子宮細胞診の意義解明を目的とした.
    方法:手術を施行した表層上皮性・間質性卵巣悪性腫瘍のうち, 術前3ヵ月以内に子宮細胞診が実施された85例を対象とし, 子宮細胞診における陽性率を算出した. また, 陽性率と関連する諸因子について解析した.
    成績:(1) 子宮頸部細胞診の陽性率は6%, 子宮内膜細胞診の陽性率は17%であった.(2) 頸部細胞診と内膜細胞診が同時に施行された27例中, 内膜細胞診が陽性, 頸部細胞診が陰性の症例は5例, 両者とも陰性の症例は22例であった.(3) 卵巣癌臨床進行期別に細胞診陽性率を検討すると, 臨床進行期と頸部細胞診陽性率との間に有意差が認められた (p<0.05).(4) 腹水の有無, 腹腔細胞診成績と子宮細胞診成績との間に有意な相関は認められなかった.(5) 頸部細胞診では類内膜腺癌, 内膜細胞診では漿液性腺癌での陽性率が他の組織型より有意に高かった (p<0.01).(6) 組織学的分化度と陽性率とに有意な相関はなかった.
    結論:卵巣癌の早期診断の上で, 子宮細胞診は有用な検査法とはいえないと思われた. しかし, 進行例では陽性となる症例も多く, 子宮細胞診で腺癌細胞が観察された場合, 卵巣癌の可能性も念頭においた検索が重要であろう.
  • 池田 聡, 船越 尚哉, 鈴木 恵子, 木村 博, 本間 恵美子, 五十嵐 健一, 芝田 敏勝
    2003 年 42 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    目的:肺扁平上皮癌で高率に発現する高分子ケラチン (34βE12) と肺腺癌に特異的にみられる Thyroid Transcription Factor-1 (TTF-1) を呼吸器細胞診標本に二重染色して, 少数出現する悪性細胞が腺癌か扁平上皮癌かを鑑別できるか検討した.
    方法:68例の非小細胞肺癌 (腺癌43例, 扁平上皮癌20例, その他5例) の捺印標本に, まず34βE12を染色し, その後過熱による抗原賦活化処理を行い, TTF-1を染色した. また, 細胞診陽性と診断され, その後手術, 生検により組織型まで決定した20例の気管支洗浄細胞診標本 (以下, 洗浄標本) を脱色して同様な検討を行った.
    成績:捺印標本では全例の扁平上皮癌が34βE12陽性でTTF-1陰性であった. 一方, 腺癌では65.1%が34βE12陰性で, TTF-1は95.3%で陽性であった. また, 34βE12の発現は腺癌の分化度と有意な逆相関がみられた. 洗浄標本では出現した1, 2ヵ所の悪性細胞について発現を検討したところ, 腺癌の16例中13例がTTF-1陽性で, 扁平上皮癌の4例中3例が34βE12陽性となった.
    結論:34βE12とTTF1の二重染色は, 日常検査において細胞診標本上の悪性細胞を腺癌か扁平上皮癌か鑑別する場合有用である.
    また, 腺癌における34βE12の発現減弱は腫瘍の分化度を反映する可能性が示唆された.
  • 濱川 真治, 森 一磨, 柏崎 好美, 田辺 美絵, 近藤 洋一, 坂牧 久仁子, 清水 誠一郎
    2003 年 42 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:悪性中皮腫症例の体腔液に出現した細胞のうちhump様細胞質突起を有する鋳型細胞に注目し, その形態学的特徴と細胞生物学的意義について検討した.
    方法:上皮型悪性中皮腫4例の細胞診材料を用い, 腫瘍細胞の形態学的特徴を観察した.さらに, 免疫染色および電子顕微鏡的検討も行った.
    成績:体腔液中に出現した上皮様中皮細胞は, 複数の細胞が互いに密着する像, 細胞質および核の鋳型形成像, hump様細胞質突起を有する鋳型細胞, いわゆる相互封入像, または数個の細胞からなる鋳型細胞集塊像などを示した. これらの所見は細胞集塊形成に至る過程と推察された. これらの細胞は, 免疫染色にてカルレチニン, CK5/6, WT1, EMAが陽性であった. 電顕的にはhump様細胞質突起部には細長いmicrovilliがみられ, 核周囲にはCK5/6陽性像に一致すると考えられる特徴的な中間径フィラメントの集簇を認めた.
    結論:上皮型悪性中皮腫の細胞診断において, hump様突起を有する鋳型細胞には形態学的特徴があり, 加えてこの鋳型細胞は細胞集塊形成の過程であると推察された.
  • 唾液腺原発症例との比較
    石井 美樹子, 小島 貴, 赤嶺 亮, 河野 純一, 島田 智子, 田中 文彦
    2003 年 42 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部の「腺様嚢胞癌」(“adenoid cystic”carcinoma: 以下“ACC”) 1例を経験し, 唾液腺等に原発するadenoid cystic carcinoma (以下ACC) と比較して興味ある知見を得たので報告する.
    症例:手術材料で最終的に“ACC”と診断された57歳女性の症例を経験したが, 唾液腺ACCの細胞像と比べて核大小不同が目立ち, 核クロマチンの分布が不均等で細胞結合性が弱く, 二相性を示唆する所見も認められなかった. また, 組織学的にも従来いわれている導管細胞と筋上皮細胞の二相性は認められず, 唾液腺ACCとの起源の違いが示唆された.
    結語:子宮頸部の“ACC”は唾液腺などにみられるACCと本態が異なるものと考えられているが, 通常のスクリーニングでこれを鑑別するのは困難である. しかし, adenoid cystic patternを示す集塊を認めた場合, 子宮頸部“ACC”の本態を理解することにより本腫瘍の診断も可能になるものと考えられた.
  • 竹島 信宏, Tetsuya NAKAGAWA, Yuji ARAI, Yuko SUGIYAMA, Yasuo HIRAI, Katsuh ...
    2003 年 42 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Background: The prognostic significance of positive peritoneal cytology in endometrial cancer remains unsettled. We previously classified malignant cell clusters on peritoneal smears into two morphologic types and found that those with irregular edges, so-called “scalloped clusters”, were associated with peritoneal seeding or a poor clinical outcome. We have also reported on the use of postoperative peritoneal washings to investigate residual malignant cells in the peritoneal cavity.
    Case: A 56-year-old woman underwent surgery for endometrial cancer (grade 1 endometrioid adenocarcinoma). At operation, positive peritoneal cytology was found without obvious peritoneal seeding, so a tube for cytologic studies was inserted when closing the abdomen. Washings were obtained via the tube at 7 days and 14 days after surgery, and both sets of washings were also positive for malignant cells. All three peritoneal smears showed scalloped clusters. These findings strongly suggested the presence of occult metastasis in the peritoneal cavity that had been overlooked at operation. Despite adjuvant therapy, the patient developed intraperitonal recurrence 8 months after surgery.
    Conclusion: Postoperative peritoneal washings and morphologic analysis of positive peritoneal smears are useful to determine the malignant potential of endometrial cancer with positive peritoneal cytology.
  • 田中 義成, 大谷 博, 岸川 正大
    2003 年 42 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:特発性肺胞蛋白症は, 肺胞腔内に脂質を含む蛋白様物質の沈着がみられる原因不明のまれな疾患である. 今回, われわれは, 特発性肺胞蛋白症と診断された3例を経験したので, それらの気管支肺胞洗浄 (BAL) 液の細胞所見および経気管支肺生検 (TBLB) の組織所見について報告する.
    症例:年齢は48~50歳ですべて男性. いずれも自覚症状はなく, 健診にて胸部異常陰影を指摘され, CTにて肺胞蛋白症が疑われた. BAL液の細胞所見としては, すべての症例に微細顆粒状物質とともに大小さまざまな顆粒状物質が多量にみられ, 2例では非常に厚みのある境界明瞭な球状体が観察された. TBLB標本では, 肺胞蛋白症として矛盾しない組織像を示していた.
    結論:肺胞蛋白症の診断および治療にはBALがきわめて有用であり, 早期発見・治療により良好な臨床経過が期待される.
  • 河合 賢, 岸川 直人, 伊藤 敬, 足立 史朗
    2003 年 42 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:glomus腫瘍は毛細血管の先端にある神経筋性装置に由来する良性腫瘍で, そのほとんどは四肢末端や爪床に発生する. 胃粘膜下腫瘍として発生し, 術中迅速細胞診にて推定し得たglomus腫瘍を経験したので報告する.
    症例:32歳, 女性. 高度貧血の原因精査の過程で, 出血を伴う胃粘膜下腫瘍が認められた. 術中の捺印細胞診では, 単一で異型度の低い腫瘍細胞が結合性の強い小集塊を形成しているのが認められた. クロマチンパターンが均上一で結合性の強い像からglomus腫瘍が疑われた. 組織診断において細胞像を反映する典型的なglomus腫瘍の像が確認され, 免疫組織染色の結果も併せて診断が確定した.
    結論:小型類円形の均一な腫瘍細胞からなる胃粘膜下腫瘍としてはcarcinoid腫瘍が鑑別にあげられるが, 腫瘍細胞の結合性の強さやクロマチンの性状から, その鑑別は比較的容易と考えられた.
  • 鶴田 誠司, 野本 豊, 新保 千春, 根岸 春美, 新井 華子, 飯島 美砂, 小島 勝, 鈴木 豊
    2003 年 42 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景: 細胞質内にazur顆粒を有する胃原発のmarginal zone B-cell lymphomaを経験したので報告した.
    症例: 66歳, 男性. 下痢, 食欲不振を主訴とし当院内科受診. 胃内視鏡生検にて悪性リンパ腫の診断. 胃噴門側切除術が行われた. 術中に行われた捺印細胞標本を観察した. 中型の腫瘍細胞が単調に出現していた. 小リンパ球, 類形質細胞, 形質細胞が少数混在していた. 細胞質はPa-panicolaou (Pap.) 染色で淡明, Giemsa染色では弱塩基性であった. またGiemsa染色にて細胞質内にazur顆粒を認めた. Azur顆粒は約21%の細胞に認められた. 核はくびれており, Pap. 標本では明瞭な核縁が認められた. 核小体は明瞭で核に比べ大型で, 上一つのものが多かった. クロマチン凝集は小リンパ球に比べ軽度であった. 免疫組織化学により腫瘍細胞はCD20cy, CD79a陽性, cCD3, CD5, CD10, CD23, CD45RO, Granzime B陰性であった.
    結論: Azur顆粒を有する腫瘍細胞が出現する悪性リンパ腫は, NK細胞およびT細胞由来のリンパ腫がよく知られている. 一方B細胞性リンパ腫においてもまれにazur顆粒を認める症例があることも念頭に置き, クロマチンパターンや核型など細胞像を総合的に判断し, 診断を進めていくことが重要であると思われた.
  • 渡邊 佳代子, 大野 英治, 服部 学, 横山 大, 渡辺 純, 小林 伸行, 蔵本 博行
    2003 年 42 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:胃原発小細胞癌はきわめてまれな腫瘍である. 今回, 捺印標本による胃小細胞癌の細胞所見に, 免疫化学的および電子顕微鏡的観察を加えて検討したので報告する.
    症例:65歳, 男性. 内視鏡検査にて胃体上部後壁に94×70cm大のBorrmann 3型の腫瘤を指摘され, 胃全摘術が施行された. 腫瘍摘出時の捺印細胞所見では, 壊死性背景にN/C比のきわめて高い裸核状小型の腫瘍細胞が, 散在性あるいは木目込み細工様に配列して出現していた. 核はリンパ球よりやや大型で円形または楕円形を呈し, クロマチンは細顆粒状で一部には小型核小体を認めた. 肺小細胞癌に類似した所見であった. 組織所見では楕円形から一部模形の核を有する胞体の乏しい腫瘍細胞が充実性に増殖していた. 細胞と組織の免疫染色で, chromogranin Aやsynaptophysinの神経内分泌系マーカーが陽性を呈した. また, 腫瘍組織の戻し電顕で神経内分泌顆粒が確認されたことから, 小細胞癌と確診された. さらに, 同組織に隣接して認められた中分化型管状腺癌を示す小病巣でも神経内分泌顆粒が認められた.
    結論:本症例は細胞学的特徴より小細胞癌の細胞診断は可能であった. さらに, 免疫組織化学的および電子顕微鏡的観察により神経内分泌細胞への分化が確認された.
  • 三谷 美湖, 高橋 保, 森木 利昭, 植田 庄介, 一圓 美穂, 根本 禎久, 熊澤 秀雄
    2003 年 42 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:アメーバ性肝膿瘍は, 日常の細胞診で遭遇する機会はまれで, その報告は少ない. 今回, 細胞診が診断の根拠となった症例を経験したので報告する.
    症例:49歳, 男性. 高熱と腹痛を主訴に受診. 画像上, 肝右葉に3cm大の膿瘍様病変が認められた. 8ヵ月前の中国渡航歴からアメーバ性肝膿瘍が疑われ治療が行われた. 治療開始2日後に採取された灰~黄白色調の肝膿瘍液の生鮮標本からアメーバは検出されず, 同時に提出された血清学的検査も陰性であった. しかし, 細胞診では栄養型アメーバが認められ, PAS反応やライト染色, 抗赤痢アメーバ抗体を用いた免疫染色結果から赤痢アメーバ栄養型と確定し, アメーバ性肝膿瘍と診断した.
    結論:赤痢アメーバ栄養型は, パパニコロウ染色およびPAS反応で好染する内質と染色性に乏しい外質, 小型円形核と中心性のkaryosomeが特徴的で, 他の細胞成分との鑑別点となった. 確定には細胞診標本で抗赤痢アメーバ抗体を用いた免疫染色が有用であった. 感染源の特定は困難であるが8ヵ月前の中国渡航での感染の可能性が疑われた. 膿瘍液の外観や血清抗体価にとらわれず, 常にアメーバ性肝膿瘍の疑いをもって対処することが重要と思われた.
  • 宮嶋 葉子, 伊藤 仁, 梅村 しのぶ, 安田 政実, 長村 義之
    2003 年 42 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:穿刺吸引細胞診材料により診断し得た悪性葉状腫瘍を2例経験したので報告する.
    症例:症例1は46歳, 症例2は44歳の女性. 主訴はともに乳腺B領域の腫瘤であった. 腫瘍細胞は結合性を欠き, 比較的豊富な細胞質を有し, 大小不同や多形性を示していた. 核形は円形~楕円形で, 核クロマチンは微細で増量し, 著明に腫大した核小体を有していた. また多核巨細胞が認められた12例ともに背景に嚢胞の存在を示唆する泡沫細胞と正常乳管上皮細胞が出現していた.
    結論:鑑別診断としては間質肉腫, 癌肉腫, 紡錘細胞癌などが考えられたが, 泡沫細胞, 正常乳管上皮細胞の出現, 悪性上皮性細胞の欠如などの所見から鑑別可能であった.
    葉状腫瘍の治療は悪性であっても正常乳腺を一部含めた局所切除で十分である, といわれることから術前の穿刺細胞診で悪性葉状腫瘍を推定すること, すなわち, 良, 悪性だけでなく組織型を推定することは過剰な治療を防ぐためにもきわめて重要と考えられる.
  • 第42回日本臨床細胞学会総会ワークショップ2
    團野 誠, 是松 元子
    2003 年 42 巻 1 号 p. 55
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 石原 明徳, 上森 昭, 小山 英之, 中村 豊, 福留 寿生, 白石 泰三, 渡辺 昌俊, 田中 浩彦
    2003 年 42 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺硬癌の間質を組織学的および細胞学的に観察し, 細胞診への応用について検討した.
    方法:硬癌86例を含む浸潤性乳管癌258例と浸潤性小葉癌9例を対象とした. 穿刺吸引細胞診はPapanicolaou染色標本で観察した.
    成績:硬癌の間質には豊富な膠原線維と (筋) 線維芽細胞の増生が観察された. 腫瘤辺縁では腫瘍細胞の脂肪組織浸潤がみられ, 腫瘍中心部に硝子化線維, 弾性線維が観察された. 細胞診では硬癌の73%に間質成分が観察され, 弾性線維と腫瘍細胞の脂肪細胞間浸潤像は他の組織型に比較して有意に多かった. 腫瘍中心部の穿刺吸引では細胞量が少なく検体不適正あるいは鑑別困難な標本がみられた.
    結論:乳腺硬癌の間質の量と構成成分によって腫瘍細胞の出現パターンが異なった. 弾性線維と腫瘍細胞の脂肪細胞間浸潤像は硬癌の診断に有用であった.
  • 穿刺吸引細胞診でいかに正しく診断するか
    前田 昭太郎, 細根 勝, 片山 博徳, 礒部 宏昭, 柳田 裕美, 阿部 久美子, 日吾 美栄子, 飯田 信也, 横山 宗伯, 内藤 善哉
    2003 年 42 巻 1 号 p. 64-72
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:穿刺吸引細胞診 (FNAC) でいかに乳腺硬癌を正しく診断するか, その工夫点について検討した.
    方法:乳腺硬癌の手術症例112例を狭義の硬癌, 乳頭腺管癌由来の硬癌 (乳頭腺管型硬癌), 充実腺管癌由来の硬癌 (充実腺管型硬癌) に大別し, それぞれの細胞学的特徴を検索した.
    成績:狭義の硬癌27例では, 細胞量少量 (67%), 細胞の結合性弱 (63%), 細胞異型軽度 (56%) のほか, 小塊状配列 (78%), 索状配列 (89%) が高頻度にみられ, ICLは48%にみられた.乳頭腺管型硬癌72例では, 細胞量多量 (69%), 細胞の結合性弱 (74%), 細胞異型高度 (53%) のほか, 孤立散在性 (58%), 小塊状配列 (82%), 索状配列 (83%), 線状配列 (50%), 楔状配列 (51%) が高頻度にみられ, ICLは47%にみられた.充実腺管型硬癌13例では, 細胞量多量 (92%), 細胞の結合性弱 (77%), 細胞異型高度 (77%) のほか, 孤立散在性 (85%), 小塊状配列 (85%), 索状配列 (69%), 線状配列 (54%), ICL (54%) がそれぞれ高頻度にみられた.
    結論:細胞の性状, 細胞配列の形状, およびICLの有無から, 組織像を推定しながら良悪性の判定をすることがFNACによる硬癌の診断上, 重要である.それでもなお, 診断困難なときに針生検あるいは摘出生検を行うことが望ましい.
  • 硬癌の亜型別細胞所見および小葉癌との比較
    南雲 サチ子, 春日井 務, 芦村 純一, 中泉 明彦, 小山 博記
    2003 年 42 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺硬癌の穿刺吸引細胞診成績と細胞像の特徴および浸潤性小葉癌 (小葉癌) の細胞所見との比較検討を行った.
    方法:細胞診断成績は硬癌86例 (純粋型16例, 乳頭腺管型34例, 充実腺管型36例) を対象とした.細胞学的検討には観察可能であった硬癌74例と小葉癌14例を用いた.検討項目は, 癌細胞の出現形態, 細胞配列, 核形, クロマチン, 核小体, 細胞質内小腺腔 (ICL) で, 核面積は純粋型硬癌10例と小葉癌10例を計測した.細胞標本はPapanicolaou染色である.
    成績:細胞診正診率は純粋型81.2%, 乳頭腺管型941%, 充実腺管型100%であった.硬癌全体の共通細胞所見は, 癌細胞出現数の多少にかかわらず, 索状, 箱型配列を認める症例が多かった.亜型別所見の特徴として純粋型硬癌では癌細胞の出現数が少ない症例が多く, 乳頭腺管型は細胞集団単個細胞など出現形態が多彩で, クサビ状や腺管状配列が特徴であった.充実腺管型は細胞集団や単個細胞が多数出現する症例が多かった.硬癌の3亜型の中で, 純粋型の細胞所見が小葉癌に類似していた.両者の鑑別点として, 純粋型硬癌ではクロマチンが穎粒状・密で濃染核の割合が高く, ICL出現頻度は38%と低く, 平均核面積は50.0μm2と大型で大小不同が著しかった.一方, 小葉癌はクサビ状, 腺管状配列を認めず, ICL出現頻度は64%と高く, 平均核面積は345μm2と小型で比較的均一であった.
    結論:硬癌の細胞像は多彩であったが, 亜型別細胞所見は穿刺吸引細胞診における組織型推定に有用であった.
  • 超音波ガイド下穿刺吸引細胞診について
    馬場 紀行, 佐々木 治郎, 内田 悦子, 永山 剛久, 副島 和彦, 佐々木 陽一, 石川 則子, 野原 キクエ, 浦崎 政治, 垣花 恒 ...
    2003 年 42 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:穿刺吸引細胞診による乳腺硬癌の診断精度の向上のためには, 臨床医による的確な腫瘤穿刺による腫瘍細胞の採取が最も重要であると考え, そのためには画像診断法, 特に超音波診断装置を穿刺のためのガイドとして用いることが有効であることを検討した.
    方法:7.5MHzリニア型電子スキャンプローブ付きの超音波検査装置を穿刺用ガイドとして用い, 千葉大式の吸引用ピストルに21Gの注射針を付けた20ccのシリンジを装着して, 超音波画像下にfree hand法で穿刺針を誘導して腫瘤を穿刺した.
    成績:2000~2001年に超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を試行した215例のうち, 206例 (95.8%) は細胞診上悪性と診断できた.9例は診断確定のために外科的生検を要した.
    考察:本法は比較的短期間で穿刺手技を習得することができる.また, 外来診療の場にて穿刺を行うことが可能である.しかし肥満の著しい症例や, 強い乳腺症が背景にあると正確な穿刺が困難である.また検者の疲労度によって穿刺の精度が落ちる可能性もある.
  • 細胞採取から診断まで
    鈴木 正人, 長嶋 健, 矢形 寛, 橋本 秀行, 今中 信弘, 笠川 隆玄, 榊原 雅裕, 二階堂 孝, 石倉 浩, 宮崎 勝
    2003 年 42 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:乳腺硬癌の細胞診断は, 細胞採取量が少なかったり, 細胞が小型で異型が読み取りにくかったりして診断に苦慮する場合がある. 当教室における細胞採取の工夫および診断・評価上の特異点について報告する.
    方法:1. 浸潤性乳管癌73例を対象に超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行いその結果を解析した. 2.原発性乳癌120例を対象に穿刺吸引細胞診の細胞像をコンピュータ画像解析し, 硬癌の特徴を検討した.
    結果:超音波ガイド下穿刺吸引細胞診は98.6%の症例で細胞診断可能な細胞量が採取できた. 硬癌においても89.2%でclass IV以上の診断を得た. また画像解析で算出された核面積変異係数 (NACV) を核異型の客観的parameterとして用いると, 平均核面積73μm2以下の「小さい核」からなる腫瘍においても硬癌はそれ以外の乳癌と比して高値を示し (29.5±9.7%VS 25.5±6.9%, p<0.05), 異型が強いことが示された.
    結論:超音波ガイド下に細胞診を行うことで細胞採取の確実性が向上し, 硬癌においても診断能があがる. また画像解析を行うことで異型の判定に苦慮する小型細胞からなる腫瘍でもより正確に核異型度の評価が可能になり, 診断の補助として有用である.
  • 前田 勝彦, 笠井 久豊, 伊藤 真子, 渡辺 昌俊, 白石 泰三
    2003 年 42 巻 1 号 p. 94-95
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a case of cutaneous metastasis of prostate cancer, A 73-year-old man had a nodular lesion in a chest tumor. Aspiration cytology showed a cribriform pattern of tumor cells with oval and round nuclei and fine granular chromatin. Histologically, the tumor consisted of various-sized glands and cribriform structures. Immunohistochemical staining for prostate-specific antigen was positive in tumor cells and confirmed in transrectal biopsy of the prostate. When aspiration cytology is used in cutaneous tumors, prostate cancer should be considered as a differential diagnosis.
  • 浅利 智幸, 奈良 幸一, 細部 貞廣, 斎藤 謙
    2003 年 42 巻 1 号 p. 96-97
    発行日: 2003/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    A 78-year-old male reporting cough and hemoptysis was found in chest radiography to have multiple hazy nodular shadows in both lungs but computed tomography and ultrasonography did not indicate a primary lesion in other organs. He died 12 days later. Autopsy showed multiple blood-tinged tumors in the lung but not in other organs. Cytology imprinted from 1 pulmonary tumor showed atypical cells occasionally forming small clusters and lumen-like structures. Nuclei were irregular and byperchromatic with large nucleoli. Some tumor cells showed erythrophagia in the marginal cytoplasm. Immunohistochemically, tumor cells were positive for factor VIII and CD31, lading to a diagnosis of angiosarcoma. Cytologically. it was difficult, but possible to diagnose angiosarcoma by erythrophagia.
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