目的:乳腺硬癌の間質を組織学的および細胞学的に観察し, 細胞診への応用について検討した.
方法:硬癌86例を含む浸潤性乳管癌258例と浸潤性小葉癌9例を対象とした. 穿刺吸引細胞診はPapanicolaou染色標本で観察した.
成績:硬癌の間質には豊富な膠原線維と (筋) 線維芽細胞の増生が観察された. 腫瘤辺縁では腫瘍細胞の脂肪組織浸潤がみられ, 腫瘍中心部に硝子化線維, 弾性線維が観察された. 細胞診では硬癌の73%に間質成分が観察され, 弾性線維と腫瘍細胞の脂肪細胞間浸潤像は他の組織型に比較して有意に多かった. 腫瘍中心部の穿刺吸引では細胞量が少なく検体不適正あるいは鑑別困難な標本がみられた.
結論:乳腺硬癌の間質の量と構成成分によって腫瘍細胞の出現パターンが異なった. 弾性線維と腫瘍細胞の脂肪細胞間浸潤像は硬癌の診断に有用であった.