背景:尿細胞診で発見された前立腺の小細胞型神経内分泌癌と中・高分化型腺癌との移行を示す稀有な1例を経験したので報告する。
症例:73歳, 男性. 肉眼的血尿を主訴として2001年7月来院. 尿細胞診は小細胞型悪性細胞と腺癌との混在を示した. PSA値は39.2ng/ml. 前立腺生検で中・高分化型腺癌および膀胱生検で小細胞型未分化癌. 前立腺・膀胱重複癌が疑われ9月膀胱前立腺全摘, 回腸導管造設術を施行. 全摘材料の病理組織診断は小細胞癌との移行, 分化を伴う前立腺中・高分化腺癌, pT4, pN1であった. 術後, 縦隔リンパ節, 肝転移. 全経過9ヵ月. 2002年4月死亡, 剖検.
結論:当初生検では前立腺・膀胱重複癌の診断であったが, 全摘材料についての検討では, 病理学的には小細胞型神経内分泌癌への分化, 移行を示す前立腺腺癌で, 膀胱の病変はその浸潤であった症例である.