日本臨床細胞学会雑誌
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術後19年目に穿刺吸引細胞診で肝転移が発見された甲状腺癌の1例
高橋 保植田 庄介三谷 美湖一圓 美穂森木 利昭大木 章大朏 祐治
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2004 年 43 巻 4 号 p. 272-275

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抄録

背景:甲状腺乳頭癌が肝臓に転移することは非常にまれである.肝腫瘍の穿刺吸引細胞診で甲状腺乳頭癌の転移が考えられた症例を経験したので報告する。
症例:87歳, 男性.肝嚢胞腺癌の疑いで腫瘍切除術が施行され, 手術時に腫瘍の穿刺吸引細胞診が行われた.シート状, 乳頭状, 球状の上皮細胞集団が多数認められ, コロイド様物質や砂粒体もみられた.腫瘍細胞の核はすりガラス状を示し, 核溝や核内細胞質封入体も認められた.また, 隔壁性細胞質内空胞や扁平上皮様化生細胞も認められた.摘出された腫瘍は嚢胞内乳頭状腫瘍で, 壊死, 出血, 石灰沈着を伴っていた.組織像も甲状腺の乳頭癌に類似し, サイログロブリンとTTF-1の免疫染色が陽性となり, 甲状腺癌の肝転移と考えられた.
結論:手術時穿刺吸引細胞診で甲状腺乳頭癌を疑い, 臨床への問い合わせで19年前の甲状腺乳頭癌 (pT2N1, stage III) の手術の既往が判明したまれな1例を報告した.

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