日本臨床細胞学会雑誌
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カルチノイド様構造を示す乳腺神経内分泌癌の1例
舎利弗 都々子野村 浩一長岡 豊原田 徹
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2004 年 43 巻 6 号 p. 386-389

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抄録

背景:神経内分泌分化を示す乳癌には種々の組織型の腫瘍が含まれているため, その細胞学的特徴も十分確立されていない. 今回, カルチノイド様構造を示す乳腺神経内分泌癌を経験したので報告する.
症例:64歳, 女性. 背部痛を主訴として当院循環器科を受診していた. CT検査, 超音波検査で右乳腺腫瘤を指摘された. 穿刺吸引細胞診では大型~小型細胞集塊や孤在性細胞が多数認められた. 大型集塊では細胞の柵状配列を示し, 小型集塊では流れるような配列を示していた. 細胞は円柱状~紡錘形で, 紡錘形~楕円形核, 顆粒状クロマチン, ライト緑淡染性細胞質を有していた. 明らかな二相性はみられなかった. 細胞診断は鑑別困難で腫瘍摘出術が施行された. 腫瘍は26×19mmで, 組織学的にはカルチノイド腫瘍に類似した, 胞巣状, リボン状, 索状, 管状の腫瘍細胞の増生がみられた. Grimelius染色で好銀性顆粒が認められ, 免疫組織化学的にchromogranin A, synaptophysinが陽性であった. 結論:乳腺穿刺吸引細胞診で紡錘形~楕円形核を有する円柱状~紡錘形細胞が柵状配列や流れるような配列を示す場合は, カルチノイド様構造を示す神経内分泌癌も考慮する必要がある.

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