日本臨床細胞学会雑誌
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悪性腺腫と鑑別を要する分葉状頸管腺過形成の細胞の見方と捉え方
畠 榮三上 芳喜秋山 隆定平 吉都
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2006 年 45 巻 2 号 p. 134-140

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抄録

目的:悪性腺腫と鑑別を要する分葉状頸管腺過形成lobular endcervical glandular hyperplasia(以下LEGH)の細胞学的特徴を明らかにするため, 正常頸管腺, 腺異形成, 上皮内腺癌などの子宮頸部腺系病変の細胞像と比較検討した.
方法:頸部スメアで異型腺細胞が認められた85例の子宮頸部腺病変を対象として, 背景, 細胞の出現形態,核所見ならびに細胞質内粘液の染色性などを検討した. また, Ioffeらによるスコアリング・システムによる半定量的な異型腺病変の評価法の意義についても検討した.
結果: 全集塊中のシート状大型集塊の出現頻度は腺異形成50%, LEGH42%, 悪性腺腫21%であった. 2, 3層の核重積を示す柵状集塊は上皮内腺癌17%, 微小浸潤腺癌11%, LEGH5%, 悪性腺腫12%であった. 4層以上の重積は上皮内腺癌9%, 微小浸潤腺癌35%の頻度で認められたのに対して, LEGH, 悪性腺腫では03%, 2%にすぎなかった. 核異型はLEGHでは認められなかったが, 悪性腺腫では明らかな核形不整, クロマチン構造の粗造化, 核小体の明瞭化が認められた. 核内細胞質内封入体はLEGHの1/3, 悪性腺腫の2/3の症例で認められた. LEGHと悪性腺腫では細胞質内粘液が黄色から淡黄色の色調を呈していたのに対して, 他の病変ではヘマトキシリン好性であった. Ioffeらの基準に準拠すると腺異形成, LEGH, 悪性腺腫, 上皮内腺癌および浸潤腺癌のスコアの平均値はそれぞれ3.5, 3.8, 4.2, 6あった.
結論:LEGHならびに悪性腺腫は黄色調を呈する細胞質内粘液と核内細胞質内封入体がみられる点で他の頸部腺病変から区別される. 両者の判別には細胞集塊の形態と核の異型性, すなわち核形不整および大小不同, クロマチン構造の粗造化,核小体の明瞭化,などが重要であると考えられた.

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