目的: 自然尿を用いた尿細胞診による低異型度尿路上皮病変の検出に適した標本作製法を見いだす.
方法: 組織診にて尿路上皮癌Gradelと診断され術前に自然尿細胞診が行われた170検体と, 同期間に疑陽性とされたが腫瘍性病変が認められなかった誤疑陽性50検体を対象とした.標本作製法はオートスメアによる遠心直接塗抹法 (A法) 36検体, すり合わせ法 (S法) 44検体, すり合わせ法にスプレー固定標本を加えたスプレー併用法 (SS法) 52検体, サイトスピンによる遠心直接塗抹法 (C法) 38検体である.A, S, SS法ではパパニコロウ染色とギムザ染色を併用し, C法ではパパニコロウ染色のみを施行した.各法における細胞診成績の統計学的有意差の有無と誤疑陽性症例の細胞像を検討した.
成績:(1) 4法問の陽性率に有意差は認められなかった.(2) 4法間における誤疑陽性率ではA法がSS法に比べ, 有意に高かった (p<0.05).
結論:(1) 簡便なすり合わせ法においても, ギムザ染色を併用することで特別な機器を必要とする遠心直接塗抹法に準じた成績を得ることができる.(2) 誤疑陽性判定を減少させるためには, ギムザ染色施行時の検体処理法は遠心直接塗抹法よりすり合わせ法が適している.