1997 年 11 巻 1 号 p. 49-58
要 旨
本研究の目的は診断期から治療期におけるがん患者の思いを構造的に明らかにし,家族への援助のあり方を検討することである.対象は病院に入院して積極的治療を受けているがん患者の家族である.発病から治療終了までの家族の経験やそれに対する思いを面接により聴取し,その逐語録を分析素材とし,質的分析を行った.
11名の家族は全員女性で,妻,母,嫁,義妹であった.分析により5つの家族の思いのカテゴリーが見いだされた.家族ががんに罹患した事への思い,治療の厳しさへの思い,家族への思い,医療の助けへの思い,将来の見通しへの思いであった.
さらに得られたカテゴリーを構造化し,カテゴリーの内容をほりさげて検討した結果,家族は,自分自身を介護者とみなしているが,情緒的身体的に診断,治療から大きな影響を受けており,病気のごく初期における家族への積極的介入の必要性が示唆された.