2000 年 14 巻 1 号 p. 3-14
要 旨
研究目的は,化学療法の副作用により嘔気・嘔吐のある参加者と共に患者・看護職者関係を軸としたリラクセーションプログラムを実施し,その過程で参加者の体験がどのように変化するかを探求することであった.研究デザインは一群事前事後の準実験研究とし,ベースライン,リラクセーション練習期間,リラクセーションプログラム実施期間の3つに分けてその経過を探求した.データは質的データ(参加者の化学療法と病気およびリラクセーションへの気持ち)および数量的データ(嘔気の程度,嘔気・嘔吐による苦痛の程度,嘔吐回数,制吐剤使用回数,食事摂取量,バイタルサイン)を収集した.研究参加者は4名であった.
研究結果として,4名の参加者は,研究者との相互作用を通して自己の体験を内省し,化学療法に対する自分の思い込みや構えに気づいて,それらを取り払って化学療法を受けるようになった.そして化学療法と病気への気持ちがより積極的になっていった.数量的データには変化がみられなかった.そして,参加者が化学療法を納得して受けていること,参加者と研究者の関係が開かれたものであること,参加者の苦痛を伴う体験が長引かないうちにリラクセーションプログラムを開始することが重要であるように思われた.
患者・看護職者関係を軸としたリラクセーションプログラムは化学療法による嘔気・嘔吐のある患者の体験が望ましい方向に向かうのに役立つ看護独自の介入であるということを示唆した.本研究の限界は参加者の人数が4名と少なかったことであり,継続して研究する必要がある.