日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
Print ISSN : 0914-6423
ISSN-L : 0914-6423
14 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • ―患者・看護職者関係を軸としたリラクセーションプログラムを用いて―
    坂下 智珠子, 遠藤 恵美子
    2000 年 14 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2000年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    研究目的は,化学療法の副作用により嘔気・嘔吐のある参加者と共に患者・看護職者関係を軸としたリラクセーションプログラムを実施し,その過程で参加者の体験がどのように変化するかを探求することであった.研究デザインは一群事前事後の準実験研究とし,ベースライン,リラクセーション練習期間,リラクセーションプログラム実施期間の3つに分けてその経過を探求した.データは質的データ(参加者の化学療法と病気およびリラクセーションへの気持ち)および数量的データ(嘔気の程度,嘔気・嘔吐による苦痛の程度,嘔吐回数,制吐剤使用回数,食事摂取量,バイタルサイン)を収集した.研究参加者は4名であった.

    研究結果として,4名の参加者は,研究者との相互作用を通して自己の体験を内省し,化学療法に対する自分の思い込みや構えに気づいて,それらを取り払って化学療法を受けるようになった.そして化学療法と病気への気持ちがより積極的になっていった.数量的データには変化がみられなかった.そして,参加者が化学療法を納得して受けていること,参加者と研究者の関係が開かれたものであること,参加者の苦痛を伴う体験が長引かないうちにリラクセーションプログラムを開始することが重要であるように思われた.

    患者・看護職者関係を軸としたリラクセーションプログラムは化学療法による嘔気・嘔吐のある患者の体験が望ましい方向に向かうのに役立つ看護独自の介入であるということを示唆した.本研究の限界は参加者の人数が4名と少なかったことであり,継続して研究する必要がある.

  • 茶園 美香
    2000 年 14 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2000年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がん性疼痛緩和ケア行動意図(行動意図)に影響する要因,行動意図とがん性疼痛緩和ケア行動との関連,がん性疼痛緩和ケア行動に影響する要因を明らかにし,さらに要因間の関連を検討することである.データ収集は参加観察,面接,自己記入法を用いて,がん専門病院と大学病院に勤務し,がん性疼痛患者をケアした経験が半年以上ある看護婦40名を対象に行った.その結果,次のことが明らかとなった.

    1.行動意図は「痛みは取れるもの」「鎮痛薬は使うべき」という価値・信念と関連していた.

    2.「痛みは取れるもの」「鎮痛薬は使うべき」という価値・信念は,「実践的知識」と関連があった.

    3.行動意図は「綿密な情報収集」と関連していた.

    4.「綿密な情報収集」には,ケアすることへの「好意的な感情」や「期待」が関係していた.

    5.「好意的な感情」や「期待」には,「行動意図」「信念」「知識・技術」が関係していた.

    6.「綿密な情報収集」は看護婦の人間の見方,看護の役割,看護過程を高め,看護婦の行動を支えていた.

  • 稲垣 順子, 遠藤 恵美子
    2000 年 14 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2000年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は, Newmanの理論を枠組みとして,看護インターベンションとしてのパターン認識の過程を喉頭を摘出され苦悩状態を長く体験している男性患者と共に辿り,患者の体験の変化を明らかにした.

    パターン認識の過程には,局面1:研究参加者は,現在の関心事を表出する/研究者は,研究参加者の関心事を共有する,局面2:研究参加者は,自分の人生全体がみえる/研究者は,研究参加者のパターン認識を察知する,局面3:研究参加者は,これまでの人生を再確認し,新しい生き方を見出す/研究者は,研究参加者をより深く理解する,局面4:研究参加者は,自分の新たな可能性を見つけて安定する/研究者は,研究参加者の変容・成長がわかるという4つの局面が現れた.

    これは,拡張する意識としての健康の過程であり,この看護インターベンションが長期間にわたって苦悩を体験した患者に対して役立つことを例証した.

研究報告
feedback
Top