2002 年 16 巻 1 号 p. 5-16
要 旨
本研究の目的は,がん性疼痛のためにモルヒネを内服している外来患者のモルヒネ使用に対する懸念と服薬行動と,その関連要因を明らかにすることである.研究方法は,研究の同意を得られた30名の外来がん患者を対象に,Barriers Questionnaire(以下,BQ),日本語版簡易疼痛調査表(以下,BPI),独自に作成した服薬行動の質問紙を用いて面接調査を行った.その結果は,以下の通りであった.
1 .モルヒネ使用に対する懸念の尺度BQを邦訳し使用した結果,BQの信頼性が確認された.
2 .BQのサブスケールの中では,「病気の進行への心配」「耐性の心配」「習慣性の心配」の得点が高かった.
3 .年齢とBQのサブスケール「痛みの治療へのあきらめ」「習慣性の心配」「BQ全体」との関連性が示唆された.
4 .麻薬の副作用の有無とBQの「副作用の心配」との関連性が示唆された.
5 .服薬行動は因子分析の結果,3つの因子「規則的な服薬行動」「薬について相談・調整する行動」「薬を追加・調整する行動」が抽出され,外来患者は,モルヒネ使用への懸念が高いと規則的な服薬行動をしない傾向があり,「BQ全体」と「規則的な服薬行動」との関連性が示唆された.
6.BQのサブスケール「痛みの治療へのあきらめ」「習慣性の心配」「副作用の心配」「耐性の心配」「医師の治療の妨げになることへの心配」「BQ全体」とBPIの「弱い痛み」との関連性が示唆された.
以上より,外来患者のモルヒネ使用への懸念を軽減するためには,モルヒネの服薬指導と副作用対策の知識を提供していく必要性が示唆された.また,指導後も患者が自主的にペインマネジメントに参加できるように継続して支援していくことが重要である.