2002 年 16 巻 2 号 p. 68-78
要 旨
本研究は,化学療法を受ける患者のセルフケアを促進するための動機となる要素,実際の行動などについて探求することを目的とした.対象は患者10名と看護師9名であり,患者のセルフケア行動の動機となった要因,セルフケア行動,セルフケアの結果を内容分析した.看護師の調査は患者のデータの信頼性を高めるために行った.
化学療法を受けるがん患者のセルフケア行動を促進する動機となる要素は,【有効な情報の獲得】【他者強化】【自己強化】【隠し事がされていない状況】【信頼できる対象がある】【家族と同じ方向を向いているという確かさ】【自分の状況を評価する】【自分で体験し自信がある】【苦痛が緩和・予防できると認識している】が抽出された.セルフケア行動は,【副作用の予防・対処】【生活の調整】【体力をつける】【気分転換】【感情の表出】【医療器具が取り扱える】【仕事の調整】【家族と相談】【必要な情報を探索する】【医療者に必要な情報を提供する】が抽出された.セルフケア行動の結果は,化学療法を受けたがん患者は【意思決定できる】【治療の継続】【コントロール感を得る】【不安の緩和】【苦痛の緩和】が抽出された.
以上,セルフケア行動の動機となる要素は,情報の獲得とともに,強化したり,苦痛が緩和される等が抽出された.化学療法を受けるがん患者のセルフケア促進のためには,不安の緩和,闘病意欲向上などのがん告知され侵襲的な治療を受けている患者のニーズにあった関わりが求められる.