2003 年 17 巻 1 号 p. 5-14
要 旨
長期療養生活を続ける造血器がん患者にとっての希望の意味とその構造を帰納的に明らかにするために,大学病院に入院中の造血器がん患者7名に,3ヵ月間で延べ41回の面接調査を行った.エスノグラフィーの手法を用いて明らかにした6つのカテゴリー名は,生きたい,ただ良くなりたい,生きなくちゃ,嫌になる,治療を終えないとどうにもならない,病気と付き合っていくであった.
『生きる』というのが長期療養生活を続ける造血器がん患者が持つ希望のテーマであり,“生きたい”という思いをあらわすカテゴリーのなかに生きるという希望は表現されていた.彼らが生きるという状況をどのように捉えていたかは“ただ良くなりたい”理由をあらわすカテゴリーのなかに見ることができた.生きる意思を患者に与える機能を持った事柄は“生きなくちゃ,生きてやる”というカテゴリーを形成した.このカテゴリーにあらわされた内容は,“嫌”にさせる機能をあらわすカテゴリーの内容と対をなしていた.嫌になる対象は“治療を終えないことにはどうにもならない”という現実であり,がん患者がこのような現実に対処する方法は,“病気と付き合う”というカテゴリーにあらわされていた.
本研究結果には,長期療養を続ける造血器がん患者が困難な状況に身を置きながらも,彼ら特有の状況認識の方法や生きる姿勢によって希望を持ち続ける際の彼らのありようが示されていた.