日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
Print ISSN : 0914-6423
ISSN-L : 0914-6423
17 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 水野 道代
    2003 年 17 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    長期療養生活を続ける造血器がん患者にとっての希望の意味とその構造を帰納的に明らかにするために,大学病院に入院中の造血器がん患者7名に,3ヵ月間で延べ41回の面接調査を行った.エスノグラフィーの手法を用いて明らかにした6つのカテゴリー名は,生きたい,ただ良くなりたい,生きなくちゃ,嫌になる,治療を終えないとどうにもならない,病気と付き合っていくであった.

    『生きる』というのが長期療養生活を続ける造血器がん患者が持つ希望のテーマであり,“生きたい”という思いをあらわすカテゴリーのなかに生きるという希望は表現されていた.彼らが生きるという状況をどのように捉えていたかは“ただ良くなりたい”理由をあらわすカテゴリーのなかに見ることができた.生きる意思を患者に与える機能を持った事柄は“生きなくちゃ,生きてやる”というカテゴリーを形成した.このカテゴリーにあらわされた内容は,“嫌”にさせる機能をあらわすカテゴリーの内容と対をなしていた.嫌になる対象は“治療を終えないことにはどうにもならない”という現実であり,がん患者がこのような現実に対処する方法は,“病気と付き合う”というカテゴリーにあらわされていた.

    本研究結果には,長期療養を続ける造血器がん患者が困難な状況に身を置きながらも,彼ら特有の状況認識の方法や生きる姿勢によって希望を持ち続ける際の彼らのありようが示されていた.

  • 水野 道代
    2003 年 17 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,長期療養を続ける造血器がん患者が希望を維持していく際に用いる状況解釈のプロセスとその方法を帰納的に明らかにしたものである.大学病院に入院中の造血器がん患者7名に,3ヵ月間で延べ41回の面接調査を行い,その逐語録の内容をエスノグラフィーの手法を用いて分析した.

    造血器がん患者が長期にわたる療養生活のなかで希望を維持していくプロセスには,1)先のことが考えられない段階,2)退院後の生活を望む段階,3)現在の状態に慣れる段階,4)ただ良くなりたい段階という4つの段階があった.各段階は,時間の経過というよりも,患者が①具体的目標や②死や③治癒の可能性をどのようにとらえているか,あるいは,患者の④病気と付き合っていく方法がどのような状況にあるかによって,その特徴を示すことができた.つまり各段階にはその段階に応じた状況解釈の特徴があり,彼らの希望はその解釈の方法に大きな影響を受けていた.そして“治療を終えないとどうにもならない”という気付きが各段階から段階への移行を左右した.また,彼らは長期療養生活を続ける過程で,病気と付き合っていく方法を身につけていた.具体的な目標をあえて持とうとせず,死を身近に感じながらも,医療の可能性を深く信じていたのもその一つであった.このような患者の態度を看護師が支持することも,彼らが身に付けた対処能力を侵さないようにするためには必要であることが本研究結果から示唆された.

  • 浅野 美知恵, 佐藤 禮子
    2003 年 17 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,手術を受けた成人がん患者が社会復帰する過程で,家族員の患者支援に関わる行動を明らかにし,家族員への看護援助のあり方を検討することである.病名を告知されて手術を受けた成人がん患者の家族員8名を対象に,参加観察法と半構成的面接法により縦断的にデータ収集を行い,質的・帰納的に分析した.

    家族員の患者支援の行動は,《1.がん体験者との生活を築く》《2.病気の家族員とともにがんと向き合う》《3.体調を気遣いながら病気の家族員の自立を支える》《4.病気の家族員ががんと共生するよう導く》《5.自分の生き方を貫く》《6.病気の家族員と距離をおいて接する》《7.体調を気遣いながらも病気の家族員の自立に委ねる》の7カテゴリであった.さらに,カテゴリとサブカテゴリを各対象者別に整理・分類した結果,特徴的な2つの群に大別された.カテゴリ1.2.3.4.が大勢を占めるA群と,カテゴリ5.6.7.が大勢を占めるB群であった.

    家族員は,がんという病に脅威を感じつつ,自らの生活の中に患者ケアを組み入れていく主体的な取り組みをしており,患者支援行動は,がんという病から命を救うための行動,家族員としての役割認識に基づく行動,家族員自身の生活を守る行動であると捉えることができる.また,A群は患者ケア重視の行動,B群は生活維持重視の行動と捉えることができ,患者支援は2つの行動内容が混在すると考えられる.がん手術後の患者の社会復帰に向けた家族員への援助のあり方は,家族員の行動に応じた方法を柔軟に選択することが重要である.

研究報告
  • ―積極的に生活を整えている3名によって語られた内容から―
    大堀 洋子, 佐藤 紀子
    2003 年 17 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2003年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,乳がん再発治療を外来通院で受ける人々への看護を探求する目的で行った.研究方法は,半構成的面接法とし,質的帰納的分析法を用いた.その結果,骨転移や肺転移によって日常生活に支障をもたらす症状を抱えていると思われた3名が語った内容の中心的テーマは,「何も困ることは無く,普通に生活できている」であり,医療者が予測していた困難さは聞かれなかった.3名の語る『普通の生活』には,これまでの自分の生き方・考え方を振り返り,その時々の置かれた状況を自分の価値観で受けとめ,自分らしく生きるための選択や取引があった.そして,自分らしく生きたいと思う気持ちを支えることとして,《医師との信頼関係が築かれている》を中心に《すべてを知っている》《自分のことは自分で決める》《ストレスは貯めない》《役割を持っている》《気づかわれている》の6つのカテゴリーが見出された.これら6つのカテゴリーの1つひとつが『普通の生活』で在り続けるため,さらには主体的に生活を整えるうえで必要な事と考えられ,生活の質(QOL)に影響する要因と考えられた.

    これらの結果から,医療者の役割は,人々の生き方・考え方の意味を理解し,その人がもつ生活調整力や自己決定を支援すること,さらに看護師の役割としては,人々に不安な気持ちやその時々の希望を表現することを促し,継続的なケアを保証することであった.

feedback
Top